「今はここを通す訳にはいかない。あの方のためにも……な」
そう言いながらに太刀を振りかざす纉抖に、珀憂はギリギリのところでそれを躱すと、次いで薙がれた一太刀を剣を抜いて受け止めた。
太刀というからには相手の間合いに入ることが困難となり、リーチの長さでは明らかにこちらが不利となる。
「だが……!」
珀憂は上から被せるようにして刃を合わせると、そのまま下へ振り払うようにして自分の間合いへと入り込む。
そして彼は回転するようにして纉抖の背に回り込むと、その遠心力を利用して大きく刃を横に薙いだ。
「っ――!」
珀憂の放った一撃は纉抖の背を切り裂いて深い傷を刻むことなり、明らかにそれは致命傷と見てとれるような量の出血を伴っていた。
「すまないな、経験の差が違うんだ。それに……もしかしたら香野と遡琉王子が助けを必要としているかもしれないんでな。……せいぜい長く眠っててくれよ」
彼はそう言うと、あまりにも呆気なく息絶え動かなくなった纉抖を置いて先へと進んだ。