「さて、記憶を頼りに来たのはいいのですが……」
仲間と離れ、一人別行動をしていた雅は、ノルンの国の“国内”にある、とある民家の屋根の上に来ていた。
しかし、そこには彼以外の人影は無く、残っているのは転がった空薬莢と血痕だけ。
「自分で帰った……という訳では無さそうですね」
まだ新しいそれに、雅は人知れず眉を顰める。
しばらく辺りを散策してみたが、ラグナロクに関する手掛かりはおろか、戯宮の手掛かりすら残されていなかった。
「仕方ない、ここは一旦戻って……っ!」
そして彼が踵を返して戻ろうとしたところで、突然彼の頭の中に浮かび上がった映像が、物凄い早さで浮かび上がっていく。
――これは……!
突然の出来事に、雅は思わず膝をついて肩で息を切らす。
「……っはぁ……」
落ち着きを取り戻した彼は、少し痛む頭を押さえ、今の映像に出てきた“ある場所”に目を向けた。
その場所は――
「なぜ……そんな場所に……?」
その場所は―彼らの本拠地であり、格――『オリーブ』。
雅はフラフラと立ち上がると、今は遠く見えないその場所に向けてゆっくりと歩み出した。