玉座の間



「やぁ、遠路遥々よく来てくれたね、グレイプニル騎士団の諸君」

「いえこちらこそ、お招きいただきありがとうございます」

 外観とは違い、その宮殿の中は落ち着いた造りとなっていた。

 広間にはそれは大きなシャンデリアが掲げられており、ふかふかの絨毯が一面に敷き詰められた廊下にも、一定の間隔でぶら下げられたランプが淡く黄色い火を灯していた。

 そして玉座の間に訪れた三人を待っていたのは、まだ王と言うには若い長い銀色の髪をした優男だった。

 彼は頭に乗った小さな冠を少しいじると、続いてはて、と首を傾げる。

「三人とも……とてもお疲れな様子だけど、なにかあったのかい?」

「いえ、たいしたことでは……ねぇ、珀憂?」

「あぁ、そうだな……。ご心配にはおよびませんよ。えぇと……」

「失礼、紹介が遅れたね。僕は百埜(モノ)。この国の新しい王さ。まぁ、まだ慣れてはいないんだけど」

 百埜は髪をかき上げると、次いで近くにいた執事に手短に小声で何かを告げる。その執事が部屋を後にした後、彼は改めて三人に向き直った。

「あぁ、そうそう。先日送られてきた手紙のことだけど、読ませてもらったよ。うん、中々悪くないと思う案件だね。まぁ、僕も一応国のことがあるし、あまり頻繁にそっちには顔は出せないと思うけど」

「本当か!」

 あまりにもあっさりとした承諾に、香野が驚きの声をあげるが、すかさず珀憂が鉄拳を落とす。

 そんなやりとりを見て百埜は微笑みながら、

「うん、でも、そのためにはこちらからも一つ頼みを聞いてもらいたいんだ」

「頼み……ですか」

 百埜はしっかりと頷いた。

「そう、その頼みというのが、実はこの宮殿の地下にある……」

 そこまで彼が言いかけた時、唐突にバンッ、と部屋の扉が開かれた。




  



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