宮殿の門前にて
ノルンの国の中枢にそびえ立つその巨大な宮殿は、見渡す限り雪のように一面真っ白で、それゆえに見る者を圧倒させるには十分な圧力を放っていた。
「……目が痛い」
香野は門の前で眩しそうに目を細めると、次いでその先にある庭園へと目を向けた。
門と宮殿の間に位置するその庭園は、眩しいほどに真っ白な建物に反して、一面緑が生い茂る安らぎの空間となっており、向かって左側には大きな噴水が絶えず水を噴き出している。
「なぁなぁ珀憂ー、本当にここなのか?見る限り、こりゃまたずいぶんご立派な趣味をお持ちのようだぜ、ここの領主様は」
頭の後ろで手を組みながら言う香野に、珀憂はあぁ、と相づちを打つ。
「だが行かないことには仕方がないだろう。安心しろ、既にあらかたの旨は書状にて伝えてある」
珀憂がそう言うと、次いで隣の雅が不安そうに声を上げた。
「……しかし、ここまで立派な宮殿ともなると、少し何か不自然な気も……」
「雅まで何を言っているんだ。とにかく早く行こう。寄り道しすぎたせいで、指定された時間までわずかしか無い」
心配そうに呟く雅をよそに、珀憂はジロリと横目で香野を睨み付けると、そのまま重く閉ざされたままの城門に手を掛ける。
だが。
「貴様ら、そこで何をしている!」
突然の声に驚いた三人が振り返ると、そこには純白の軍服に身を包んだ一人の青年が、ぞくにいう細身のレイピアと呼ばれる類いの剣の切っ先をこちらに向けており、こちらを睨み付けていた。
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