心に引っかかる不安



―数日後―

「おっかしいなー、ここにもいない……」

 ありとあらゆる部屋の扉の開閉を繰り返す杞微は、朝から姿の見えない少女を探そうと、必死に邸内を駆け回っていた。

「茉淦ー、どこにいるのー、茉淦ってばー」

 屋敷の中の部屋という部屋は全て見てみたものの、やはりどこを探しても彼女の姿は無い。

 焔華にも捜索を共にしてくれないか頼みには行ったが、彼は忙しいと言って相手にすらしてくれなかった。

途方にくれた杞微は、無駄に広い豪邸の中を歩き回って疲れた訳だし、と休憩も兼ねてそのまま広場に置かれたベンチに向かって座る。

「茉淦、本当にどこ行ったんだろー……」

 彼ははぁ、と特大の溜め息をついた。

 しばらくそうしていると、うつむいていた彼の視界に、前方から一つの人影が近づいてくるのが目に入る。

「……兄さん」

 ボーッとしていた杞微がそれに気付いたところで顔を上げて見ると、そこに立っていたのは彼の実の兄である纉抖だった。

「杞微、焔華から聞いたが、茉淦を探しているのだろう?」

 見透かしたように言う纉抖に、杞微は目を大きく広げる。

「えっ、兄さん、もしかして茉淦の居場所を知ってるの?」

 思わず立ち上がる杞微に、纉抖はいや、と首を横に振った。

「場所は知らない。……だが、先ほど檠與と一緒に屋敷を出ていくところを目撃した」

「檠與と……?」

 杞微は不安そうにそうか、と呟くと、すぐにそのままベンチに座り直し、次いで纉抖にも座るように促す。

「……最近、茉淦の様子がおかしいんだ」

 そしてポツリ、と彼は語り出した。




  



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