その国は遠きにあたりて



「ノルンの国?」

 聞きなれない単語に、香野は思わず聞き返した。

「あぁ、ここから南に三千キロほど離れた所にある中立国で、政治力も軍事力も共に優れている」

「つい先日、長年玉座についていた王が亡くなり、その御子息に後を継がせたと聞いていますが……」

「そうだ。まぁ、私もまだ実際見たわけではないからどうとは言えないが……中々にクセのある人物だと聞いている」

 珀憂がひとしきりノルンの国について説明をしている間はとても皆真剣に聞き入っていたが、彼がその説明を終えるた時、ふと美好が声を上げた。

 昼間のために省エネモードの美好は、夜とは違い、瞳も髪も茶色く落ち着いている。

 彼はその痛みの少ない毛先をクルクルと弄びながら言った。

「というか、そのノルンの国……だっけ?一体そこに何をしに行くのさ。僕も久々に外の世界が見られるのは嬉しいけど、いくらなんでも遠すぎやしないかなぁ」

「あぁ、そうだな。そのことについてだが……」



「そのことはわしから話そう」




  



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