幸先不安



 戯宮の――もとい雅の部屋を後にした珀憂達一行は、とりあえず一度その場を解散し、次の連絡が入るまでは各々が自分の部屋へと戻ることとなった。

「……だが、いくらなんでも納得出来ない」

「どうした遡琉、突然そんなに難しい顔して」

「あぁ?」

 香野と共に廊下を歩っていた遡琉が、俯きながらも軽い苛立ちを露にしながら彼の後を付いていく。しかし途中で香野に呼び止められたことに気が付くと、今度は明確な苛立ちを露にして立ち止まった。

「どうもこうもあるか!ここの施設には客人をもてなす程の空き部屋も用意されていないらしいからな……。まぁ、確かに突然の訪問となったのだから無理は無い。だがしかし、よりによって俺と相部屋となるのがお前とは……これは全くもって不愉快極まりない」

「部屋が空いてねーんだよ!というか、俺だってお前とだなんて嫌だっつーの!ったく、これだから貴族のボンボンはよ……」

 嘲るようにそうは笑うものの、遡琉は面倒臭そうに一度舌打ちしただけで、腕を組み香野の横を通り過ぎて行った。

 香野は疲れた顔で溜め息をつくと、先に行った遡琉を追い掛け横について歩く。

「付いてくるんじゃない、下郎が」

「そんなこと言って……俺がいなかったら誰が部屋まで案内するって言うんだよ」

「こっちこそ、自分の寝床くらいは自分で探すって言ってんだ。お前は大人しく“巣”にでも帰ってろ」

 速足で歩き去ろうとする彼の隣に並び、面倒臭さ半分、心配半分でそう声を掛けてみるものの、帰ってきたのは皮肉ばかり。

 早速、これからしばらく続くのであろう共同生活に嫌気が差した。




  



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -