それから幸陽と男は何時間もそこで喋った。
どれくらいの時間喋っていたのかわからないが気付いたら店内には二人しか残っていなかった。
マスターは気を聞かせたのか、店を出るときにはベルをならしてくれと言って店の奥にいってしまった。


男は若いとは思っていたけれどまさか自分の8歳も下の18歳だとは思わなかった。まだ未成年なのにバーにくるなんて。それにまだ高校生だという。
幸陽が驚くと男は内緒だよ、と小さく笑った。

二人は結構な量のお酒を飲んでいて幸陽はもう呂律が回らないほどよってしまっていた。対照的に男はまったく酔っていない、所謂ザルだった。

「幸ちゃん」

今まで楽しそうに笑っていた男だったが、突然真剣な面持ちになり手元のグラスを眺めていた。
幸陽は聞いているのかいないのかわからないような曖昧な返事しかできなかった。

「幸ちゃんさ、男でしょ」

酔いが回っていた幸陽だったが、その言葉で酔いがさめていった。みるみるうちに顔が青ざめていき挙動不審になる。
一方、男のほうは至って普通な感じでクスクスと笑っていた。

ついに。
ついにバレてしまった。

幸陽はパニックになり返事もできずにただただ自分の手元を見ていることしかできなかった。
いつから気付いていたのか、幸陽はわからなかった。
隣に座っている男がスッと立ち上がり、幸陽に向けて手を差し出してきた。

「幸陽君、行こっか」

“幸陽君”
この男には自分の名前は幸としか言っていなかったはずなのに。何故知っているのか。
幸陽が男なのは態度で明白になってしまったにも関わらず、手をさしのべてくるだなんて一体何を考えているのかわからない。

だけど何故かその手に引き寄せられてしまう。差し出された手をゆっくりと、弱々しく握った。
そのまま促されるかのようにその店をあとにした。

店を出たら外はまだ暗かった。
時計もしていないし、この状況で携帯もみることができず一体今が何時なのかわからなかったが、店の外には人がちらほら見受けられ町の方も賑やかだ。まだそんなに遅い時間ではないようだ。

行き先も告げられないまま手をひかれ歩いていたが、不安になりどこに行くのか訪ねたら、ニッコリと微笑むだけで男は何も話さなかった。
30分も歩いてようやく男が止まった。辺りを見回してみるとピンクや紫といったネオンで彩られた看板があちこちにあった。
二人が立ち止まった場所は所謂ラブホテルの真ん前だった。

幸陽はこれからここに入るんだと自然に理解して、顔が赤くなるのがわかった。
まさか、いきなりこんな所に連れてこられるとは思ってもみなかった。
それに男が自分と同じゲイなのかもわからないし。

ただの興味本意や、冷やかしかもしれない。

「ほら、行くよ」

また手を差し出されたが、さきほどとは違う。今ここでこの手を掴んでしまうということはこの後、男と関係を持つことを意味している。バーで知り合ったばかりの男だ。何者かもわからない。


ででもやはり、幸陽はきっとこの手を掴んでしまう。











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