mochi様より★フラ×エクSSA

mochi様より★フラ×エクSSA
窓ガラスから見えるのは青と白をベースにしたイルミネーション。年末の駅前は人でごった返していつもよりも活気に満ちている。
家でいつものように哲学書を読みふけるエクを強引に連れ出してデートに誘ったのは数時間前。人混みと無理矢理連れ出されたことで不機嫌だった彼もこのイルミネーションを見たら少しだけ顔を綻ばさせてくれた。


エクのご機嫌は中々取れない。今までエスコートした女性たちは夜景の綺麗な場所に連れていき、甘い言葉を囁けば大抵笑顔になってくれたのに。
初めは綺麗な彼の顔に一目惚れして始まった恋だったのが、いつの間にか複雑なエクの心を紐解こうと必死になっている自分がいた。


美しいものは好きだ。人も好きだし景色も物も、自分自身も全て愛せた。彼もその中の一つに過ぎなかったのかもしれない。美しい彼を側に置いて愛でていたい、単純な理由でエクに近付いた。
しかし彼の蓋は固かった。
まずこの俺を受け入れてくれない、巧みな話術とこの容姿には自信があったのに彼は一向に心を開いてくれなかった。
そして彼の世界は狭すぎた。
あらゆる哲学書を読み漁り、豊富な知識と様々な考えに触れ視野を広げたにも関わらず、彼は自分の世界を広げようとはしなかった。
いわゆる頭でっかちと言うやつだ。

俺はそれが凄く気に食わなかった。もっと他の世界に足を踏み入れれば良いのに、様々な物を見て、触れて、色んな物を知れば良いのに。世界には美しいものが沢山あるのに、エクがそれを知らずに生きていくのが悲しかった。
彼はとても臆病だった。外に出て周りの世界に踏み出すのが怖いのだ。
世の中は残念ながら綺麗なものだけではない。しかし、それも醜いものが在るからこそ輝きを放つ。汚く醜いものがそこら中に散らばっている。彼はそれに触れて自分が攻撃されることを恐れているのだと思う。




「フラン、俺はもう帰ります。こんな所、人だらけで酔ってしまいそうだ」

「オイオイ、ちょっと待ってくれよ、まだ来たばっかりだろ?これからカウントダウンセレモニーが始まるんだから」

「年末に人を散々連れ出したんだからもう良いでしょう、俺が寒いのは苦手だって知ってますよね?」

「それは知ってるさ、けど俺はきみと年を越したいんだけどなぁ。」


そう言うとエクは顔をしかめた。
駅構内にあるカフェは暖房が効いて自分には丁度良いくらいの暖かさだが、寒がりのエクにしてみればまだ肌寒いのだろう。

「フランは一緒に年を越す相手くらい沢山いるでしょう、俺なんかじゃなくても…」

「そんなこと今は関係ないだろう、今日俺が誘ったのはエクなんだから。
セレモニーが終わったら帰っても構わないから、それまでは一緒に居てくれよ」


帰ろうとするエクの腕を掴んで引き留める。いつになく真剣な顔で言うと諦めたのか、ため息を吐いて留まってくれた。
カウントダウンセレモニーは年を跨ぐ時に行われる恒例イベントで、今回彼を連れ出した一番の目的はこれだった。だからイベントが間近に迫った今、エクに帰られる訳には行かない。


「カウントダウンが終わったらすぐ帰りますからね」

「十分さ」


カウントダウンが始まった。
駅前のイルミネーションが一気に消えて辺りが暗闇に包まれる。それに合わせて、商店街のビルや駅構内のテナントの灯りも消えた。周りがざわつく。


5・4・3・2・1



ゼロ、


ドォンと破裂音が響いて、暗闇の中に一輪の花が咲く。
外にいる人も屋内にいる人も、同じ様に綺麗に輝く夜空を見上げていた。
暗さに慣れた目には眩しすぎるが、美しい冬の花火だ。
立て続けに数発、冬の夜空に打ち上げられる。

目の前に座るエクを見た。彼はほぅ、と息を吐いて夜空をジッと見つめている。
口許が緩んで薄く笑みを浮かべながら、花火の明かりで暗闇の中にぼんやりと浮かび上がる姿は美しくて。
俺は花火の美しさより、エクから目が離せなくなってしまった。

花火が終わると一斉にイルミネーションが点灯、それを合図に町の明かりが点き始めた。
広告塔の液晶テレビに『A HAPPY NEW YEAR!』の文字が映し出されて、町は静寂から解放され元の活気を取り戻した。



「どうだった?」


窓ガラスから視線を外したエクに聞いた。


「とても、綺麗でした。冬に花火は見たことがなかったですから…」

「そうかい!それは良かった!」

「…なんで貴方が喜ぶんですか」

「そりゃあ、きみが嬉しいなら俺も嬉しいからね。」


「フランの思考は理解し難いです」


小難しい顔をするエクを見て、俺はそんな難しい男じゃないよと笑う。
ただ単純にきみを笑わせて、色んな物を見せたいだけなんだ。きっとそう言ってもきみは解ってくれないのだろうけど、


この花火も部屋に閉じ籠っていては見れなかった物、冬の花火は綺麗だと知ったエク。
そんな些細な事が俺は堪らなく嬉しい。



「とりあえず、あけましておめでとうございます」


「うん、おめでとう。今年はもっとエクに色々なものを教えてあげるよ」

「なんですかそれ」

「いや、こっちの話さ」

















◆◆◆◆◆◆
【恭而】

おなじみ【MOGEN】のmochi様より、年越しフラエク小話いただきました!!
まさか年越しに私の大好物CPが届くとはマジで感激でした

今回は、貴重(?)なフラン視点です!
彼の考え、やはり単純なんですよねwww

エクは、気持ちを素直に言う人なので、イルミネーションに感激したこともしっかり伝えてくれてますね!
私の脳内フラエクに忠実な二人の掛け合い、う、嬉しすぎるっ…ぅっ!!!



そして季節ネタに胸いっぱいになりました、新年カウントダウンとか季節ぴったりですぜ!
本当にありがとうございましたあああ!!

2012/1/1



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