マルもバイトに行ったので、一人でリビングでテレビを見ているとピンポーンとチャイムが鳴った。重い腰を上げて出てみるとそこにはラッキーが玄関の前に立っていた。
まさか、これが不幸の始まりだとは。この時の俺は全く想像していなかった。
「やっほー、デュオたん。マルは居るかい?」
扉を開けて目に入ったのは、お馴染みのアニマル柄のストールを巻いた男。
思わず一気に後ずさってしまった。
「ちょっとその反応傷付くんですけどー」
「は?なに、なんでお前がウチに来んの?しかもマルならバイトだけど…」
「マジかぁ、じゃあお邪魔しまーす」
「ちょ、なんでそうなるんだよっ!」
マルに用があるなら帰れば良いのに、勝手にずかずかと部屋に上がっていくラッキー。玄関の前を体で塞いだのに、いとも簡単に入られてしまった。
悔し紛れに後ろから追いながら抗議するけど聞く耳を持たない。
リビングに行くと勝手知ったるなんとやら、冷蔵庫を開けてジュースを飲んでいた。
ほんと、ため息しか出なかった。こうやってラッキーの行動に流されてしまう自分にはほとほと嫌になってしまう。なんで俺はコイツに強く出れないのだろう、何だかんだでラッキーをあしらえるマルが羨ましい。
「デュオたーん。マルから借りたDVD一緒に見ねぇ?」
「ハァ?なんで。自分ちで見ろよ」
「まぁまぁ、そんなこと言わないで。どうせ暇なんでしょー?」
うっと言葉に詰まる。図星過ぎて言い返す言葉が見付からない。
そんな俺を尻目に、フローリングに座って勝手にくつろいでるヤツはDVDプレーヤーをいじくり出す。DVDをセットし出していたラッキーが突然声を上げた。
「なんだよ!急に大声出して」
「やべー間違えてAV持ってきちゃったよ」
思わず飲んでいたジュースを吹き出した。げほげほ、と噎せながら呼吸を整える。
「はぁぁ?意味わかんねーよっ!てか何で中身間違うわけ?!バカじゃねーの」
「なんでだろ。おっかしーな、確認した筈なんだけど。
ま、いっか。折角だし一緒にAV鑑賞しよーよ」
一瞬思考がフリーズした。
コイツは何を言っているんだ。激しく嫌な予感しかしないので全力で拒否する。
「は?なにが『ま、いっか』だよ!全然良くねーよ!てか、いいから早く帰れよっ!」
「えーデュオたんは一緒に見るの恥ずかしーんだぁ。良いじゃん男同士だし。あーそっか、こういうの恥ずかしくて見ない派?」
「はっ!?ばっ、見てるよ!バカにすんな!何だよその目はっ!分かったよ、AVぐらい、見てやろうじゃん!」
バカにした様なラッキーにムカついて、勢いで見ると言ってしまってから後悔した。
ニヤニヤと笑うヤツを見て、まんまと口車に乗ってしまった自分が馬鹿すぎて泣きたい。
結局テレビの前でAV鑑賞が始まった。
真っ昼間からAV女優の喘ぎ声が部屋に響き渡る中で男二人が並んでAv鑑賞、なんてシュールな光景なんだろう。
恥ずかしくてラッキーの顔が見れない。いや、AVを見てるのが恥ずかしい訳じゃない、断じて。隣にコイツが居ることが嫌なのだ。
アイツはどんな顔をしてこんなもの見てるんだろう。男同士で見て何が良いんだか、俺には理解できない。
視線の行き場もなく、見たくもない画面を見続ける。
画面の女はワザとらしい演技でアンアンと喘いでいるだけなのに、悲しき男の性のせいで少しだけ興奮している自分を呪いたくなった。
ああ、もう死んでしまいたい。
「ちょ、お前っ、近いっ!」
いきなり顔を近付けられて呼吸が止まりそうになった。
いつの間にか俺の側まで来ている事に気付きもしなかった。
嫌な予感しかしない。
「えー?別に良いだろ?なんかさーこういうの見てると、興奮しない?」
ニコニコ、と爽やかな笑顔でコイツは何を言ってるんだ。
「だ、誰がするかっ!」
「でも、デュオ顔赤いよ」
「それはっ、部屋が暑いからで」
「ウソつき」
ラッキーの目が厭らしく細められて、頬に冷たい手が当てられた。
その瞬間、ギクリ、と固まってしまい体からは変な汗が吹き出だした。
逃げようにも空いた手で押さえ付けられてるために身動きが出来ない状態。
離れろ、と口を開く前に、ぱくりと口を食われてしまった。
何が起こったのか分からなくて、キスされているのだと気付いた時にはもう引き返せない。
息が苦しくなって口を開けたらヌルリと舌が入ってきた。
口内を探るように舐め回せられて、奥に引っ込んだ俺の舌を執拗に狙う。
宙に漂う手は汗でジットリと湿っている。心臓がバクバク激しく鳴って苦しい。
「っ、は!やめっ」
「ザンネン、止めないって」
ラッキーの目がぎらりと熱を孕んで俺を射ぬく。心臓が激しさを増す。やっと出た抗議の言葉も飲み込まれてしまう。
この男が一体何を考えているのか、さっぱり分からない。
調子に乗り出したラッキーの手が服の中に入り込んで、脇腹を撫でられる。良いように弄ばれてるのに、再び襲われた激しいキスに精一杯で俺はされるがままだった。
手はどんどん上に向かって行き、肋骨を一本ずつ確かめるように撫でられると背筋にビリビリと電気が走ったみたいに震えた。
離れないとヤバい、と頭の中で思うのに何故か出来ない。ラッキーの首もとから香る香水の匂いが頭を酔わせてるに違いない。そう都合が良いように思うことにした。
「ねぇ、デュオ。俺と愉しいことしようよ」
耳元で甘さを含んだ声で呟かれ、思わず頷きそうになった時。
「するわけ無いでしょーが」
廊下側から突然聞こえた声に、二人して振り向くとそこにはバイトから帰ってきたマルが立っていた。
全く玄関の開く音なんか聞こえてなかった。
おれマジで、死にたい。
「あ、おかえりマルクン。借りてたDVD返しに来たよ。中身間違ってたけど!」
「はは、ラッキーさん誤魔化せてないっすよ。ってか、そういうことするならせめて部屋でやって下さい。
玄関入って真っ先に聞こえたのがAV女優の喘ぎ声って、どんな家っすか。一瞬間違えたのかって疑いましたよ」
「アハハ、ごめーんね!つい押さえが効かなくなってさー」
「ハァァ。つい、じゃ無いっすよ。アンタは盛りのついた犬か…って、あれ?デュオどこ行きました?」
「あれ?居ない?」
「デュオー?あ、玄関に靴がない…」
「ケータイも繋がんねーよ」
「…………ラッキーさん、デュオ出てったの、確実にアンタのせいっすよ」
「はぁ?おれっ?!」
「とりあえず、最低一週間はデュオに近付かないで下さいね」
「ちょ、なんでお前がキレてるんだって!」
そんなやり取りをしていることは俺は知る由もなく、マルに顔を合わせられなくなった俺はエクの家に暫く居座ることにした。
とりあえずラッキー死ね。
◆◆◆◆◆◆
【恭而】
mochi様よりラキデュオのちょっとエロいのもらってしまいました!!!!WWWWWW
実はこの作品、煙草絵の【マル不在中に…】をご覧になって書いてくださったらしいのですよ!!
まさかこんな事態になるのなら完全にエロ絵描いておけばよk(ryっっっ!!!!
これはマジで萌えました
萌 え ま し た
ラッキーの前でだけ取り乱してすげーしゃべるデュオ理想そのものですしwwww
というかやはり小説だと読んでて妄想膨らむからヤバイですね、
これはマジで萌えました(再)
いつも素敵なラキデュオSSをありがとうございます!!!
2012/1/27
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