ガリレオ、コペルニクス、ニュートン。これらの学者達はこの世界の基盤を造り上げた偉大な先人達、
俺はその先人達の遺した知識に触れるのが凄く好きだ。
頭の中で組み立てられる論理式、思想は感情なんか排除して何時までも自分の世界に浸れる手段。
愛だとか恋だとか、そんな根拠のない感情に周りが振り回されている様子を見る度に、以前の自分は滑稽だと内心嘲笑っていたのに。
今の自分はどうだ、と考える。
従来、人との関わりを持つことが得意でない質なのに、彼は俺のテリトリーに遠慮もなくズカズカと踏み込んできた。
寒さにめっぽう弱い身体の癖に人肌に触れることが苦手な自分、
拒絶すれば良いのだ。全身で男の存在を拒否すればいくらポジティブな彼でもわかる筈だ。
それなのに俺は今でも彼を全力で拒否することができていない。
しかも最近は彼に触れられる度に原因不明の動悸と発汗が起こる始末、
俺は何か重大な病にかかってしまったのか。
こんな不安定な心理状態は始めてで、フロイトもユングも頼りにはならなかった。
真夏にも関わらず自分が着ているのはファー付きのコート。それだけでも体の芯から冷えきっている身体は暖まらなく、手足の先は氷の様に冷たい。
気休めにキッチンで熱々のホットココアを淹れながら、年中上半身裸のアメと俺を足して二で割ればきっと丁度よくなるのだろう、彼を思い出して苦笑する。
「エクっ!こんな所にいたのかい、あぁもう。俺がどれだけ探したと思う?!」
バタン、と扉が外れてしまいそうな勢いで入ってきたのは苦手なピアニッシモ・フラン
俺は大きくため息を吐いて彼を睨む。
「俺が自分の家にいて何が悪いんです、フラン。それにいつも言ってるでしょう、勝手に入ってこないでって」
「つれないなぁ!俺と君の仲じゃないか!」
「常識ってものを学んでください、だいたい貴方はいつも…「分かってるよ、君が言いたいことは!だけどね、世の中には常識や理論では片付かない物があるのさ!」
俺の言葉を遮って食い気味に力説してくるフラン。
こんなやり取りも毎度のことで、彼がこの後言うだろう言葉も容易に想像がつく。
「それは愛さ!俺は君を愛している!この気持ちは常識とか理論で片付く物じゃないのさ。俺が君のことをどれだけ愛しているか一から教えてあげよう!」
(ほら、またこれだ)
何回言われたか覚えてない位に彼は俺への愛を切々と語る。
それには俺が信仰してきた倫理観なんか簡単に覆す様な恥ずかしすぎる感情論で、俺は毎回困惑してしまう。
そしてその後に襲ってくるのは妙な動悸と発汗。いつもは極度の冷え症のせいで汗なんか出ないのに、
「エク、どうしたんだい?顔が赤いけど」
「っ、なんでもありません!」
「いや、風邪でもひいたんじゃないか?」
どれ、とフランの手が俺の頬を掴んで顔を覗き込むように近付けた。
綺麗なアイスブルーの瞳はとても冷たそうなのに、見つめられるとなんでこんなに熱いのだろう。
「っ、は、離して下さいっ」
ハッと我に返り掴まれた手を叩き落とす。彼から離れるとフランは一瞬傷付いた様に見えたが、俺は気付かない振りをして放置していたホットココアを飲んだ。
既に冷たくなっていたココアは渇いた口には丁度良かった、
(動機の原因、本当は知っている、ただ認めたくないのだ。
それを認めてしまえば俺が今まで信じていた物が崩れてしまいそうで、)
end?
おまけ
「なに、この湿っぽい生き物は」
皆の溜まり場であるバーに入ってきたルーはテーブル席で一人突っ伏している物体に怪訝な顔をした。
「またエクに拒絶されてへこんでンだよ、あいつ」
先に来ていたラッキーがルーに話しかける。お酒が入っているせいかほんのり顔が赤い。
「また?あいつも懲りないねーエクみたいな子にはフランのやり方は逆効果だっていうのに」
「あいつバカだからな、一生気付かないンじゃないか?」
ラッキーがにやにやと笑いながら手に持っていたグラスを仰ぐ。
「でも、その方が俺は面白くて良いけどね」
にこり、と人の良い笑みを浮かべるルーだが本性を知っているラッキーの顔はひきつる。
これは明らかに何か引っ掻き回す気だ。
「仕方ないから、俺達が相談に乗ってあげようか?ラッキー」
「そうだな。付き合いますよ、相棒」
こうして明らかに面白がっている二人の餌食になったフランに妙な噂が立つのはまた別の話ということで。
◆◆◆◆◆◆
【恭而】
相互させて頂いているmochi様より頂いてしまいました!
ああああありがとうございます!
こんな素敵作品になって帰ってきてくださるとは思いませんでした!!
エクの心理描写が理想そのものでございましたww
そうです、彼はダイヤモンドのように硬いツンデレなんです、数少ない資料の元よくぞわかってくださいましたね;
どんどんフランに染まっていくのを予想させる展開に何度も涎垂れました
そしておまけwwちゃっかり出てきてくださった腹黒コンビ最高です♪
本当にありがとうございます!!
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