8月某日、快晴
15歳、夏。
「英! プール行こう! それか海!」
「帰れ」
二つ年上の幼馴染みがアクティブ過ぎて困る。
「冷たいんだけど。外の暑さに反して冷たすぎるんだけど」
「こんなクソ暑い中用もないのになんでわざわざ」
「用はあるでしょ! 水遊びだよ!」
「嫌だって言ってんの。外に出たくねえんだよ」
何故か既に膨らませているビーチボールを振り回しながら、行こう行こうと抗議してくる。
しかしそれを軽くあしらいながら、どっちが年上だかわからないと溜め息を吐く。
「じゃあじゃあ、屋内は? 屋内プールならいいでしょ?」
「俺水着無いんで」
「私も無い! 今時プールで売ってるから大丈夫だよ!」
今更ながら、どうやら本気で引く気がないなと理解した。
窓の外はからりと晴れていて、太陽が眩しい。じりじりと灼かれるアスファルトの照り返しも、きっと耐え難い。だいたいにして、冷房の効いた部屋から廊下に出るのだって正直億劫なのに。
「……俺は泳がないからな」
「やった!」
4年振りの、幼馴染みと過ごす夏に。どうやら俺も、多少、浮かれているらしかった。
「あっ、意外と可愛いのあるんだ〜。んーと……」
「おい、泳ぐ時間無くなるぞ」
「待って! んんん……あっ、そうだ英、どっちが好み?」
「はァ?」
振り向いた両手にはそれぞれの手にハンガーを持っていて、悪戯っぽく笑った。
右手に白のチューブトップビキニ、左手に青のホルターネックのワンピース。
―――どっちでもいい。
それが正直なところだったが、その答えじゃあ多分、満足しないだろう。
めんどくさい、と小さく溜め息。
「こっち」
「ワンピース?」
「お前腹出ししたら危ないだろ」
「失礼な! くびれあるし! 辛うじて!」
「ふーん?」
「うわっ信じてない。いーや、買ってくるね」
小走りでレジに向かう後ろ姿をぼんやり見て、それから店内に時計を探す。
針は既に、昼の1時を差していた。