スイカ

 


「岡村〜、福井〜」
「あー?」
「なんじゃ、どうした?」
「あたしの実家からスイカ送られてきたの〜。監督には言っといたから、みんなで食べよー」
「マジ? 食う食う」
「おお、それはいいな!」
「食堂で切って貰ってくるね〜」

「エリちんスイカってほんと?」
「予想通り早かったね紫原……ほんとほんと」
「美味い?」
「あたしの親父さんが丹誠込めて育てた大玉よ〜。ほれ、一番デカい一切れあげる」
「やりー。エリちんのそーゆーとこ好き」
「はいはい」

「……一切れって言うか、どう見ても四分の一アル」
「いーのよ。バスケ部のマネージャーしてるって親父知ってるから、みんなで食えって幾つか送ってきてくれたから。はい、劉の」
「ワタシスイカ苦手アル」
「うるせえ好き嫌いすんなつべこべ言わず食え! 美味いから!」
「冗談アル。いただきます」
「おう」

「おいエリンギ! 俺の! 分は!」
「うるっせーな自分で取りなよ! ほらよ!」
「ちっせーじゃん!」
「紫原と同じサイズ要求すんなし! あれはあれしかねえよ! じゃあもう両手に持てよはい!」
「お前らもうちょっと静かに食えんのか……」
「無理! 俺今久々のスイカにメーター振り切れてっから無理!」
「ねーエリちん、これ真ん中チョー食いづらいんだけど〜」
「はいはいスプーン使えよほら」
「ありがとー」
「手慣れてきたのうエリンギ……」
「巨人の妖精はともかくゴリラの飼育員は承ってないから」
「誰がゴリラじゃ! いらんわい!」

「塩無いアルか?」
「塩? 劉は塩かける派?」
「福井さんが日本のスイカはそうやって食うもんだって言ったアル」
「(……)まあ、うん。待ってな貰ってきてやるから」
「……(今一瞬微妙な顔したな)」

「おい劉知ってっか」
「?」
「「「(またなんか変な事教えようとしてる……)」」」
「日本ではな、スイカを食うときに必ずやる儀式があんだよ」
「儀式……? 塩でなくて?」
「塩はもうかけたろ。実を食うだろ? 口ん中に種が入るだろ?」
「まあ」
「口に入った種はな、こうすんだよ」
「……!?」

「あー、種飛ばし」
「また福井は……」
「ちょっと福井! 甘いわよ! 飛ばすならこのくらい飛ばしなさい!」
「エリンギ!?」
「お前……やるな……」
「フン……伊達にガキの頃からやってないわよ……」
「並べエリンギ。白黒ハッキリさせてやらぁ」
「ワタシも大体飛ばし方はわかったアル」
「ヨシ、劉も並べ」

「おい……ちゃんと種、片付けるんだろうな、お前ら……」
「……あれさあ、まさ子ちん見たら怒られるんじゃね」
「……ああ、多分な」
「俺知ーらない」


 



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