⇒刹那様

 


「おい、来たぜ帝光中……」
「っつーことは先頭が赤司で、その隣があの……?」
「ああ……」

帝光中男子バスケ部。そこには、10年に一人の才能を有する逸材達……キセキの世代と呼ばれる天才少年達が居た。

……が。

「なあ赤司。俺やっぱ外に出るときお前の隣じゃなくて、後ろの方で桃井と一緒に歩きたい。お前ら視線集めすぎてヤダ」

今回は、その天才達にいたく気に入られて居る、とある男子マネージャーの話である。

「却下だ。だいたいお前、そのジャージを着ている以上、エリンギだってピンでも注目されるだろ」
「ぐっ……まあ……そうだけど……? っつかピンって言い方止めろ。芸人みたいだろ」

彼の名前はエリンギなめこと言った。

「くそ……黒子にミスディレクション習おうかな……」
「無理だと思います。君、自分で思ってるより目立ってますから」
「うおおおおお!? くっくろっ、黒子! どこから!」
「最初からずっとエリンギくんの隣に居ました」
「oh……」

入学時、初めはどこの部活にも入る予定の無かった彼であったが、とある上級生の「マネージャーは他は女子ばっかりでハーレム状態だからオススメ」なんてぶっ飛んだ勧誘にまんまとホイホイされてきた男子である。

「女子って結局俺が一緒に仕事すんの桃井だけだし! いや確かにぶっちゃけ桃井が一番可愛いけどさ!」
「やだなあエリンギくんったら、お世辞言ってもなんにも出ないんだからね!」
「いやー……お世辞じゃねえけどさあ……俺は他の女子マネとも仲良くしたい」
「仕方ねえじゃん。エリちんが勧誘されたのは一軍の力仕事させるためだもん」
「それだよな……マジ先輩恨むぜ……くそっ」
「あんな誘い文句に引っかかるお前が馬鹿すぎるのだよ」

呆れ果てて溜め息も尽き果てたと言う態度の緑間の言葉はもっともである。

あんな勧誘文句を思い付いて実行した方も実行した方だが、引っかかったエリンギもエリンギだ。

緑間の言葉に、クワッと目を見開いて。

「俺は! 汗むさい男共の世話をせっせと焼くよりも、そっちはそれなりにやって、あとは女子と戯れたいんだよ!!」
「くだらん」
「くだらなくない! 健全な男としての欲求だろが! なあ青峰!」
「俺は同級生の女子よりマイちゃんがいい」
「それはそれでヨシ!」
「いいんスか!?」

マジエリンギっち意味わかんねー、鬱陶しいだけじゃないスかなんてケタケタ笑い飛ばすモデルに殺意を覚える。イケメンは爆発したらいいのに。

「だいたいなんでそんなトコに拘るんすか? その割にはマネージャーの仕事ちゃんとするし」
「は? 当たり前だろうが。他の女子マネに遭遇した時にサボってたらだせえだろ」
「ああ……そういう」
「俺はちやほやされたいんだよ」
「されてんじゃん」
「は?」

あっちあっち、と指差した黄瀬の示す方を振り向けば、赤司。
目があったとたん、にこりとそれはそれは穏やかに微笑んだ。
それから、またその笑顔のまま赤司が別の方を指さすので、そちらを向くと。

いつの間にやら紫原と黒子がお菓子を広げていて、目があったかと思えばへらりと笑って、それぞれがお菓子を差し出してきて。

渡されるままに受け取れば、あっ、という顔をした黒子に気付く間もなく後頭部にボールが激突した。

痛む頭をさすりながら振り向けば、案の定青峰で、ふざけんなとばかりに投げ返したらさらりと避けられて、代わりに緑間に当たった。

般若の形相で睨みつけてきた緑間から逃げるように黄瀬を盾にしながら。

俺が望んでるちやほやはこんなんじゃないやい、と誰にともなく心の中で呟いた。


 



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