⇒睫毛様

 


宮城県、某カラオケ店、パーティールームにて。
そこでは、素晴らしいくらいにレベルの高いドルソンメドレーが繰り広げられていた。

「くっ、国見ちゃん! 次これやって!」
「……あの、そろそろ一回喉休ませて下さい」

ただし、一人で。

ぼすんとソファーに沈んだ国見の額には、うっすらと汗が滲んでいる。
曇る……とぼやきながら普段はしていない眼鏡を外して、軽く汗を拭った。
汗をかいているのは、国見だけだ。

それもその筈、入室から二時間、マイクを握りっぱなしだったのである。

「はい、国見のドリンク。キャラメルマキアートで良かった?」
「あ、なめこさんありがとうございます」
「℃-●teにBerryz●房、A●B……しかもドリンクキャラメルマキアートとかお前女子か」
「いやダブルクリームパフェ食べてる花巻さんに言われたくないです」
「国見お前普段の練習でもあのくらいキレッキレに動けないの?」
「そう言うのは金田一の役割なんで……」
「いやお前もちゃんとやれよ」

なめこと金田一の口から噂に聞いていた、国見のアイドルの完全コピーを直に目の当たりにした面々は、ついつい次はこれ、その次はあれと好き放題リクエストしまくったのだが。なんと国見はそれを全て期待以上のクオリティでこなしてみせた。

結果、国見以外は完全に傍観モードになってしまって、国見一人が延々マイクを握って立ち続けていたわけである。

「なめことか金田一の誇張かと思ってたのに……まさか国見ちゃんにこんな一面があったなんて……」
「はあ」
「も●クロもいけるの……?」
「全曲いけますよ」
「……!」
「そんな驚く事ですか?」
「驚愕の事実とはこの事だよ」

山盛りのポテトをもしゃもしゃと摘みながら、目つきはいつも通り眠たそうだ。ずっとそうだった。
が、それでもさっきまで残像が見えるかの如きキレッキレな動きでアイドルダンスをしていたと言うのだからこれを驚愕と言わずしてなんと言うのか。

「なめこさんはそんな驚かなかったですねそういや」
「まあ……別に個人の趣味にどうこう言うつもりはないし」
「ですか」
「それに、中学の時からたまにえらく可愛らしい曲口ずさんでるなと思ってたし」
「あー……つまり気付いてたんですね」
「ここまで完コピしてるとは思ってなかったけどね」

そうして、一息ついたらまたリクエストが入って。
結局、この日のカラオケは殆ど国見がマイクを握って終わったのだった。


 



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