⇒遥香様

 


影山くんてうちのクラスのエリンギさんと仲良しみたいなんだよね。

―――以上、烏野男子バレー部を震撼させた、谷地仁花の証言である。

あの影山飛雄が、と誰もが脳裏によぎった。
クラスの女子はおろか、男子でさえ、部活仲間以外とのコミュニケーションは取れていないに等しい影山飛雄が。
他クラスの、女子と仲がいいなど。

谷地の見間違い、勘違いではないのか、と。

真偽の程が気になった日向と山口はこっそり5組を覗いてみた。

「あ、日向、山口くん」

さっそく谷地に見つかってしまったが。
谷地も二人の用事に気付いたらしい。あそこだよ、影山くんも今来てる、と彼女が指差し示した教室の隅。

「なんっでそうなんのよこの馬鹿……!! 聞いてた!? ねえ今私の話聞いてた!?」
「おう。お前話なげえな」
「ぶん殴るぞ!! 長々説明したのは基本もわかってないあんたの為でしょうが!!」
「ア゙!?」
「言っとくけど影山が凄む権利無いからね! こっちが言いたいよなんだコラア゙ァ゙!?」

二人は随分とエキサイトしていた。

エリンギが教科書やらノートを振りかざして居るところを見ると、どうやら影山が勉強を教わっていたらしい。
が、効果の程はあまり期待できそうにない会話である。

エリンギは丸めたノートでスパコーン! と影山の丸い頭がぐらぐら揺れる勢いで叩いてから。

「いいですか影山くん。君には基本的に国語力が足りてない」
「日常会話出来てるんだからいいだろ」
「それは今までの相手があんたのレベルまで引き下げて合わせてくれてたに過ぎないから」
「は? どういう事だよ」
「おい今のもわかんなかったの? マジ? 本気と書いてマジなの今の?」
「エリンギ意味わかんねえぞ」
「ねえあんた私に教えて貰ってるって自覚ある???」
「? 当たり前だろ」
「説得力ねえ! キョトン顔すんな腹立つ!」

真顔で首を傾げる影山と、それに憤慨するエリンギと。

谷地はそれを見て、今日も仲良しだねなんて感想を呟いたが、エリンギのHPが無闇にゴリゴリと削られているようにしか見えない、と日向と山口は脳内で結論を下した。

二人はソワソワしていた田中と西谷に事の真相を伝え、影山には何故そもそも谷地ではなくエリンギに勉強を見て貰っているのかと訊ねた。

それに対する影山の答えといえば、中学が同じだったから、と、やっぱりどこか要領を得ない、期待とは微妙にズレた回答であったのだった。


 



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