⇒相川りい様

 


朝、いつも通りに登校した。いつも通りじゃないのはバッグの中の小さな包みだけ。
お昼、仲のいい友達といつものようにお弁当を食べた。いつもと違うのは、今日はみんなデザートにチョコレートがついていたことくらい。
放課後、いつも通り真っ直ぐ帰宅した。いつも通りじゃないのは、バッグの中に入ったままの小さな包み。

「……なに、やってんだろ、私」

わざわざ震える手で書いたメッセージカードだって無駄になってしまった。
今日1日、いつも以上にバッグを丁寧に扱っていたのも結局無駄になった。こんな事なら潰れたから渡せなかった、というオチの方が数倍マシだ。

意気地なし、と自分に悪態をついて、ぐっと破くためにメッセージカードにを握った指に力を込めた瞬間。

「なめこーっ、お友達よーっ! 可愛くてスタイルのいい子ーっ」

母親のその声に慌ててカードから手を離して玄関に走った。

「さ、つきちゃん……」
「こんばんはなめこちゃん。ごめんねこんな時間に」
「ど、どう……え、なんで……?」

動揺しきった私に、くすくす笑って、それから、ぷくっと頬を膨らませた。

「だってなめこちゃん、私との約束忘れちゃってるんだもん」
「う……わ、すれた、わけじゃ」
「……うん、知ってる」
「え」
「だから、今ならまだ許してあげる!」

にこっと笑った彼女に、ちょっと待っててと言い放って部屋に戻った。

 なんとかギリギリ、まだ14日

1日バッグを丁寧に扱っていたことは無駄にはならなかったのだ。
手に持って戻った包みを彼女に差し出すと、桃井は笑みを深くして私を抱き締めた。

むっ、胸で窒息する……!

「もうっ、私楽しみにしてたんだからね! なのに学校で全然会えないし……!」
「ふごっ……ご、ごめん、なさい」
「うん、仕方ないから、許してあげる!」

そう言って、ふふっ、と彼女は茶目っ気たっぷりに笑うのだった。


 



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