⇒緑茶様

 


「潔子と結に作るついでに作ってあげましたので感謝して食べてくれていいよ」

開口一番、エリンギはそう言って俺と大地と旭にそれぞれ箱を押し付けた。

2月14日。今日は、バレンタインである。

俺たちの手に渡されたのよりも手の掛かっていそうなラッピングの箱が、確かに清水の手にあった。

「ハッキリ言うなあ。サンキュー」
「ありがとな、エリンギ」

苦笑しながらエリンギに礼を述べる大地と旭に習って、俺もありがとな、と小さく箱を掲げながら笑った。

「もう卒業しちゃってるけど、3月14日期待してるね!」

と、エリンギは悪戯っぽく笑って、「結に渡しに行くから」と言ってぱたぱたと駆けていった。

何の気なしに箱のリボンをするりとほどくと、箱の底についていたらしい、メッセージカードが落ちた。

 同封カードに書かれた文字

拾い上げて二つ折りのそれを開くと。

あんたのは義理じゃないからね。

素っ気ない黒のボールペンで、その一文だけ書いてあった。

「あー……くっそ」
「スガ? どうした?」
「してやられた」
「え?」
「ちょっとエリンギ問い詰めてくる」

引き締めきれなくなった口元を隠しながら、既に姿の見えない彼女を追い掛けた。


 



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