⇒ぼたん様

 


「みんなありがとー! いろんなお菓子くれて嬉しいよ!」

なんて。

視線の先、階段前の廊下の、少し広いところで笑っている(多分)うちの学校一のイケメン。
かわいい女の子達がこぞって彼を取り囲んで綺麗なラッピングのお菓子を渡したりしている。

ばかばかしいと思っていた。女子高生の青春はなにも恋愛だけではないのだし、学校にイケメンがいるなんてただの都市伝説もいいとこで、恋に恋して一喜一憂なんて疲れてしまう。
そう、思っていたはずなのだが。

少なくとも学校にイケメンがいるのは事実だったし、気付けば彼を目で追うようになっていたなど、大変に馬鹿らしいお話だ。

あの女の子達に混じりたいと思っている今が、一番の笑いのタネだ。

 受け取って!

結局私は放課後までチョコレートを持て余しているわけなのだけど。

「あ、エリンギさん。まだ教室いたんだ? 寒くない?」

先程友人達と出て行ったと思ったイケメンが、ぱたぱたなんて足音と一緒に戻ってきてにこりと笑った。
突然のことに驚いて、どもりながらも大丈夫、となんとか答えた。

「……ね、エリンギさん。俺の気のせいならほんっとごめんだけど、今日俺になにか用事があった?」
「えっ」
「いや、エリンギさん、時々こっち見てたかなって思って! 俺の自意識過剰だったならごめんね。でもほら、今日俺ずっと誰かと話してたから、用があるのに気を使わせちゃったかなって」

また、にこりと柔らかく笑った。

彼は私が目で追っていたことに気付いていたし、きっとそれがなんの用事か気付いているのだろうし、気を使わせているのは私の方だ。

まさか私が残っていると知ってわざわざ戻ってきてくれたのか、なんてのはそれこそ自意識過剰なのかもしれないけど。

「あ、あの、及川くん」
「うん」
「お口に合わないかも知れない、し、沢山貰っただろうからいらないかもしれないけど……よかったら」

バッグから出した箱を差し出して。
手を伸ばしかけた彼に、いらなかったら捨てていいから、と呟くと。

「せっかく用意してくれたんだから、そんな事言わないで。俺は凄く嬉しいよ」

ありがとう、と。彼は笑ってそう言った。


 



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テーマ「人外ファンタジー」
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