⇒さいか様
スマホの画面は大きい。
操作する人の後ろに立てば、どんなページを見ていて、どんな操作をしているのかわかってしまう。
そんなわけで、原と古橋は、そんなつもりは無くとも、とある女子のスマホ画面を見てしまった。
「エリンギチョコ作んの?」
「人間が食べられるもの作れるのか?」
「古橋ぶっ飛ばすから表に出ろ」
「寒いからやだ」
相変わらずの無表情で、淡々と失礼すぎる発言をした古橋の背中をべしんと叩くと、即座に後頭部をスパンと叩かれる。
ぐぬぬ、と悔しげな顔をしたエリンギは、懲りずに古橋を小突こうとしたが、それを遮るように山崎が口を挟んだ。
誰にあげる?
その言葉にエリンギは、よくぞ聞いてくれました、とにっこり笑って。
「もちろん、花宮にあげるの!」
「は?」
「マジ?」
「趣味悪っ」
「古橋いい加減にしてよね」
三者三様の発言にみしりとスマホを軋ませると、ふと廊下に見えた影。
に、エリンギは駆け寄った。
「はーなみや!」
「んだよ来るんじゃねえ寄るんじゃねえ」
「もうっそんな連れないこと言わないでよー!」「うるせえ散れ」
「私が居なかったら寂しいでしょー?」
「嬉しくて泣けるわ」
「もー! うそばっかり!」
「声でけえようるせえ」
そう言えばエリンギは、あの花宮が苦手とする珍しい存在だったなあと三人は思い当たった。
単に鬱陶しいだけではない、花宮が彼女が苦手な最大の理由は。
「ねえ花宮」
「……んだよ」
「私、今度のバレンタイン、花宮の為に頑張るね! ホワイトガナッシュでスノーボール!」
「ぶっ殺すぞテメェ」
同族嫌悪に似たものであった。