9月末日、晴れ




あの後、いつの間にか横になってすっかりタオルケットに包まって寝ていたらしくて、蒸し暑さに起きたら菅原が背を向けて変なポーズで蹲っていた。

「ごめんスガ、私いつの間にかガチ寝してた…………なにしてんの?」
「……なんでもない。おはようエリンギ」
「うん。おはよ。これ私取っちゃっててごめんね?」
「ああ、それはいいよ、全然、うん」

エリンギは眠っていたので知る由もないのだが、ついさっきまで折り重なって眠っていたわけなので菅原とて寒かったわけでもない、ということだけ記しておこう。

さて、そんなやりとりも交えながら、合宿は着実に終わりに近づいていた。

「エリンギ、羊皮紙何センチ?」
「ん〜……三巻」
「まだある?」
「ああ、いいよ。一巻きあげる」
「ごめんありがと」

顔を合わせないまま、望遠鏡を覗き込んではペンを羊皮紙に走らせる。

9月30日、時刻は午前3時である。

あちこちから、ペンが羊皮紙を滑る音がするのは、丁度0時を過ぎた頃、担当教諭が「適宜レポート提出して解散」と言う言葉を言い放ったお陰である。
早い者はもう既に何人かが退出して居て、たった今、エリンギと菅原もちょうど同時にペンを置いた。

「あー……終わったぁ……」
「お疲れ」
「お疲れー……あー、ベッドで寝たい」
「俺も。布団の上で布団かぶって寝たい」
「でもそれは今日の夜までお預けだな……」

書きあがったレポートを纏めて丸めながらはあ、と気怠げにため息をついてぼやく。

それもそのはず、何せ明日から後期が始まるのだ。
乱れてしまった睡眠習慣を無理矢理にでも元に戻さなければならない。その為には夜から朝に掛けてぐっすりと眠る必要があるので、エリンギ達は明け方も近い今、眠りにつくわけにはいかなかった。

「エリンギ、なんならこのあと食堂行かない?」
「食堂?」
「うん。話し相手が居れば寝ないかなって」
「あー、そうね。うん、行こ行こ」

どっこらせ、なんて女子高生らしからぬ掛け声で立ち上がってレポートを提出した後、食堂に向かう。

「まだ4時前かぁ……」
「……ブラッジャーに追いかけられたら目が覚める気がする」
「怒るよ」
「ごめん嘘です」
「うん」

こうしてエリンギと菅原は夏休み最後の日、睡魔と戦いながら過ごしたのだった。





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テーマ「人外ファンタジー」
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