9月某日、曇り
とても自堕落な合宿の何日目か。
壁掛けのよくわからない形の時計でありカレンダーでもあるそれを仰ぎ見ると、丁度4日目と5日目の境目だった。
変な時間に寝たり起きたりを繰り返したせいでもう一週間経ったような気持ちでいたので、まだしばらくこの自堕落生活が続くな、と寝起きの頭でぼんやり思いながらトイレの為に一度天文台を出た。
それから早々に軽く腹を満たしてから元いた場所に戻ってくると、なんという事でしょう、持っていたはずのタオルケットがなくなっていました。
寝惚けた周りの誰かに持って行かれたんだな……と、胃に食べ物を入れたことでスッキリ覚めた思考回路が理解した。
まあ今からまたレポートとるからいいや、と望遠鏡を覗き込んで羊皮紙に日付と時間とを書き込んで、と暫く真面目に観測したのち。
「…………さむ」
夏の夜でも、空気が乾燥していると冷える。それに夏だ暑いと昼間は言っていても、もう9月も半ば、夜中は冷えてきているらしい。
思わず抱えた膝と手を擦り合わせると、ふわりと温かくなった。
「だから言ったろ。もう一枚なんかいらないの、って」
「……スガ」
肩に半分かけられたタオルケットに顔をあげると、ふ、と菅原が緩く笑った。
柔らかい髪がところどころ跳ねているし、目元がなんとなくぼやけたようになっているから、どうやら寝起きだ。
「ごめんね、起こした?」
「うんにゃ、勝手に起きた。あっちからスープ貰ってきたけど、エリンギ、飲む?」
「……飲む」
「ん。こぼすなよ」
ほこほこと湯気をあげるスープカップを差し出されるままに受け取る。野菜スープだった。
ずず、とすすると熱くはないけどあったかくて、思わぬ冷気に負け切っていた身体を内側から温めてくれた。
私がそんなことをしている間に菅原はのそのそといつもより緩慢な動きで私の隣に座って、さっき肩に引っかけた落ちかけのタオルケットの端を持ってそのままぐっと肩を組んだ。
「さすがにいきなりなくなると俺も寒いから我慢してな」
「え、あ、おう」
くああ、と大欠伸する菅原の目はぼんやりしていて、まだ寝ぼけてるんだなこれ、となんとなく察した。
普段一緒にいるところをよく見る澤村や東峰はしっかりした体格をしているからあまり目立たないけど、こうして隣り合うと菅原も男子高校生18歳なんだ……とか思ったり。(そういや菅原が一番誕生日早いんだ、とか余計な事も思い出してみたりして。)
「スガ、なんか遠慮してるとスガも疲れるだろうしもうちょいくっついてもいい?」
「お〜」
「はーい」
二回目の大欠伸を聞きながら、少し彼の方に身体をずらした。そしたら、背中から肩に回っていた手が近くなって。
体の前面にまではタオルケットが回ってないから暑くはないけど、これ完全に目が覚めた時菅原どんな反応すんのかなあ、なんて。
気になりながらも、近くなった人の体温にまたゆるゆると眠気が刺激され、うっかりそのまま寝落ちていくのだった。