9月某日、晴れ




車内販売のオバちゃんから、お弁当とお菓子とお茶を買い漁って、1人だからと向かいの座席に広げてもむもむとお弁当のおにぎりを頬張っていた。結構美味い。
マグル界ならペットボトルでも缶ボトルでもあるのに、水差しから自分のマグに注いでもらうスタイルの飲み物だけは本当に不便だな、と内心ぼやきながらごくんとお茶を飲みくだした時。

ごいんごいんとコンパートメントの扉が揺れる音がして、どうぞー、と答えるとがらがらと控えめに扉がスライドして。
その向こうから現れたのは、見知った顔だった。

「おっすエリンギ。一月ぶり」
「菅原じゃーん! 一月ぶり〜」
「一緒していいっすかー……って凄いなこれ」
「あっ」

へらっと笑った顔に間髪入れず頷いたが、そうだ。冒頭で言ったように、1人の空間をかなり好き勝手使っていた。向かいの席は荷物もあるしお菓子もあるしケージもあるしでとても人の座れるものではない。

「ごっめんちょっと待ってお菓子片すわ」
「あ〜エリンギがよければ隣でもいいんだけど」

慌てて言った言葉に対して返ってきた菅原の言葉に、ピタリと杖を握ろうとした手を止める。

「横?」
「うん。横」

聞き返せば同じ言葉で返して頷きながら、更にここ、と言いながら人差し指で指し示して見せた。
この広げたお菓子の山を片付けなくて済むのなら、それに越したことはない(面倒臭いので)。

「おお、いいよいいよ」
「はーいお邪魔しまーす」

そんなわけで快諾すれば菅原もにっと笑って隣に腰を下ろした。菅原って笑うとマイナスイオン出ると思う。マイナスイオン何にいいのかよく知らないけど多分なんか癒されるやつだと思う。

あ、そこのお菓子好きなの食べていいよ、と伝えればあざーっす、なんて返事と共にかえるチョコレートに手が伸びる。
辛いのも甘いのもいけるって中々得だよなあと思いながら私もパンプキンパイに手を出した。

「なんかテンション微妙だよなあ……。天体観測は楽しみだけど、俺らだけ先に学校っつーのが……」
「まあ三年だけだから全員商店街に行けるのだけが救いだよねえ」
「うん。まあその商店街に行けるのもなけなしの自由時間だけどな」
「合宿今夜からだもんね」

学校厨房の屋敷しもべたちが天文台まで食事を運んでくれる、トイレ以外はこもりきりの天体観測。
おやつやジュースなんかは基本的に提供されているのだけど、マグル出身な嶋田さんのおかげで完全な魔法界でありながら嶋田マートにはマグルの製品も並ぶ。(主に飲食系が)
どんなに屋敷しもべたちが優秀でも、マグル界のものは出せない。なので、それだけは先生も持ち込みを許可してくれている。

「私らも買い物行く〜? 冷やかしにでもさ」
「そーだなあ、合宿ん時にいらなくても、人が少ないうちに行くのも手かも」
「お。じゃあ学校着いたら荷物置いて商店街入り口で待ち合わせ、どう?」
「おー! じゃあそれで!」

ニシシ、と顔を見合わせて笑ってたところで、汽笛が鳴る。もうじきに、学校ホームに列車が到着するらしかった。





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