9月某日、晴れ
東京駅構内、鉄筋コンクリートの壁の向こう。
魔法学校直通特急のホームに、トランクを持った黒尾と、鳥のケージを持った研磨。
に、見送られるなめこの姿があった。
「で、天球儀は出来たか?」
にやにやと笑いながら尋ねた黒尾に、なめこは渋い顔をして。
「もーうっさいな最後まで! なんとかなるってば!」
「……てことは、まだ未完なんだね」
「うるしゃい」
言い返した言葉に対する研磨のツッコミにムッと頬を膨らせた。
それにまたカラカラと笑いながら黒尾が差し出したトランクを受け取って、また研磨からもずんだのケージを受け取った。
「んじゃ、また学校でな」
「うん。お先〜」
「……気をつけてね」
「ありがと!」
「問題起こすなよ。お前の暴走の歯止め役になるとか菅原がかわいそうだからな」
「あんったには言われたくないわよ!」
軽口には軽口を返して、いつもより車両の少ない学校特急にトランクとケージに入った愛鳥と共に乗り込む。
出入り口に近いコンパートメントに荷物を押し込むようにして入って、ガタガタと窓を押し上げて顔を出す。
それがわかっていたように、幼馴染み二人はこちらを向いてまだそこに居た。
「お見送りどーも。クロと研磨こそ、ちゃんと課題終わらせなさいよね〜。まだレポート残ってんの私知ってるんだから」
「一緒に騒ぐ奴がいないからな。すぐ終わるだろ」
「……なめこいなくなったからって、俺にちょっかい出すのやめてよね」
「それはお前がゲームばっかやってるからです」
一足先に戻った後、またリビングのソファーの定位置でゲームに没頭する研磨と、それをつつきまわす黒尾が容易に想像できて笑った。
それじゃあ、と言ったのと同時に汽笛が鳴る。出発時刻だ。
慌てて首を引っ込めて窓を閉めると、ガラスの向こうのホームでひらひらと手を振る二人に手を振り返して、ようやく座席に腰を下ろすのだった。