9月某日、晴れ




使うかどうかわからないけど、あの子に頼まれていたものだから、と。
必要になった時に郵送でも良かったけど、手渡ししたかったから、と。

黒尾の母から受け取った箱を、憮然たる面持ちで眺める。
まさかこんなものまであるなんてなあ、と暫く見つめてみたが、だからと言ってどうなるものでもなく、ただ小さくため息をついて箱が崩れない程度にトランクに押し込んだ。

「なんだったんだ? うちの母ちゃん」

孤爪家にて借り受けている二階の一室から出て、階段を降りしなに向けられた4つの双眸にしばしぽかんとして。

「ん〜まあ、そのうち話すわ。ぶっちゃけ大したものではないのであんま気にしなくていいよ」
「ふーん?」
「変な顔しないでよ……ホントなんだから。そんな事より天球儀マジでどうしよ……」

曖昧な返事がお気に召さない雰囲気の幼馴染たちを後目にどっかりソファーに腰を下ろして頭を抱える。

「お前まだやって無かったのか」
「むしろやってるとこ見たことないでしょ」
「……まあ」
「……この前天文台行った後にでもやったかと思った」
「あー、お父さんの作ったやつもってくればよかったかなあ」
「いやそれはバレるわ」
「知ってる……」

呆れ返った研磨と、遠慮なく腹を抱えて笑い出した黒尾を視界からそっと外す。

レポート系の課題は大方終わった。資料不足なところもあるが、幸か不幸か他よりも一足早く学校に戻らなければならないため、その辺りは学校の図書館でどうにかなるだろう。
問題はその先だ。

一足早く学校に戻る理由は天文学の天体観測であり、そして天文学の課題が天球儀で、提出日が天体観測の夜だ。
どんなスパルタ課題だよ、なんて嘆いてみても、提出日は早くも1週間後に迫っていた。





「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -