9月某日、快晴
「あれ? なめこはどうした?」
「庭だよ。母さんと庭小人の駆除してる」
「……で、お前はそこに踏ん反り返ってゲームかよ」
「いいでしょ別に……あ」
研磨の手元のゲーム画面に、「GAME OVER」と表示され、背景が真っ暗になってしまった。
不満げな顔をしてから、迷わずリトライを選ぶ。
全く、彼の父のからくり好きが影響したはずなのに、どうしてこうも違うものかと黒尾は寝癖頭をかいた。
そんな事にはまるで興味なく、研磨の手元からはまたゲームのサウンドが鳴り始める。
そして、同時に勝手口が開いた。
「んもーっ、9月になってもあっついわね! ただい……あら。クロじゃん。いらっしやーい」
「おう。っつーかお前ん家じゃねえし」
「いいじゃん細かいことはさあ。研磨、ゲームのほうはどう?」
「んー……ちょっと操作がめんどい……ああ、ミスった」
飽きなくていいでしょ、とゲームの提供者は得意げにけらけら笑って。
まあねと頷いた研磨は、基本的に立ってなくとも誰でも使え、立っているならなおさら使えの精神である。俺に向かって手を伸ばして、そこの充電器取って、と手のひらを上に向けてひらひらと振った。
仕方なしに振り向いた先、テーブルに転がっているコードらしきものを渡してやるとそれをゲームの機器に繋ぎながら、研磨は漸く顔を上げた。
「クロ、なめこに用事だったんじゃないの?」
「ん? そうなの?」
「あ〜まあな」
元々男同士だった幼馴染みの中にすんなり入ってきた、たった一人の女児。
結果彼女も幼馴染みとして育ったし、大抵のことはなんでも一緒にやってきた。
そんな紅一点とも呼べる彼女に、研磨の両親もうちの両親もベッタベタに甘い。
「うちの母ちゃんがお前になんか渡したいもんがあるんだと。あと単純に構って欲しいみてえでよ」
「渡したいもの? なんだろ」
「知らね。で、呼んで来いって言われたんだけど、来れるか?」
「はいはい〜じゃあちょっと着替えてくるから待ってて」
「おう」
パタパタと軽い足音を立てて階段を駆け上がって行くのを見届けて、じっと感じていた視線の方へ顔を向ける、と。
「……本当に何か知らないの?」
と、なぜか胡乱げな視線を貰ってしまって。
「知らねえっての」
出がけに見た、妙な含み笑いの母を思い出しながらため息をついた。