9月某日、曇りのち晴れ




東京郊外。
日本人の誰もが想像する東京都と言えば、現代の首都であり煌びやかで賑やかな流行の最先端をゆく都会。では、無いだろうか。

そんな"常識"の陰には"非常識"が強く根付いており、舗装もされていない獣道を、黒いローブを羽織った三人組がざくざくと柴を遠慮なく踏みしめながら足を進めていた。

同じような風景が続く中、ぴたりと、先頭を歩くなめこが足を止めた。
そこにはぱっと見では気づけない小川と、その傍らに背の高い藤袴。
とても普通の人では届かなそうな先端には、真新しい折った跡があった。

ふと小川の向こう側、倒木の割には比較的綺麗な丸太を見つけ、懐から取り出した杖をそれに向かって振った。
重力に逆らった丸太はなめこの杖の動く通り、藤袴の傍らに着地して。

さっさとその真ん中に座れば、右隣に黒尾が、左隣に研磨が座った。

「別にあんた達までローブ着てこなくてよかったのに」
「魔法使いとしての正装だろ」
「言う割に孤爪のおじさまのローブじゃん。やっぱ丈足りてないし」
「……後ろから見てたけどやっぱかっこ悪いよ。ていうかダサい」
「うっせ」

けたけたといつもの調子で笑う三人の間を風が通り過ぎた。

「……ねえ、天文台寄って帰ろう」

立ち上がってに、と笑ったなめこにしばし2人はぱちぱちと目を瞬かせて。
それから、黒尾がにっと笑った。

「天体観測するか?」
「え、それはやだ」
「また吠えメールくるんじゃない?」
「絶対やんない」
「もう来ねえだろ流石に」

苦い記憶にあからさまに顔を歪める研磨と、愉快そうに笑うなめこと黒尾が歩み始めた先は、やはり柴を踏み分ける獣道。
けれど、三人の進める足は迷いが無くて。

「……あ。そういえばなめこ、天文学取ってなかった?」
「? 取ってるよ?」
「……天球儀、出来たの?」
「っ!? なっ、なんで研磨が知ってんの!?」
「菅原さん……? が、練習の時ボヤいてたから」
「あんにゃろう」
「お前一番めんどい課題残ってんじゃねえか」
「うっさいな! 提出出来ればいいんだし!」

なんとも学生らしい会話を交わす三人の後ろ姿は、吸い込まれるように木々の合間に消えていった。





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テーマ「人外ファンタジー」
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