国見と幼馴染み

 


私と国見英は幼馴染みである。
幼稚園から同じで、ぶっちゃけ私は別の子が初恋だったわけだが、英の初恋は私だ。

なぜ自信満々にそんなことが言えるのかと言うと、まあ小さい頃の私はかわいかったとナルシストよろしく言ってもいいが、そうではない。
単に、言質がとれているからだ。

「あ、エリンギ」
「おー、英。なんか久々〜」
「まあクラスちげーし、最近受験対策ばっかだからな」

幼稚園の頃はなめこちゃんなめこちゃんと私の後をついて回った可愛い英も、今じゃにょきにょき伸びて180を超えたらしい。すっかり立派な巨人になってしまった。

顔立ちも、その頃は女の子より可愛らしかったのに、いつの間にか男の子の顔になった。

小学校に上がった頃には、気付いたらエリンギ、と名字で呼ばれるようになってしまったし。
私の方は今更国見、なんて呼ぶのも違和感があるのでずっと英と呼んでいるけど。

「英はどこ行くんだっけ」
「青葉城西。推薦貰えるらしい」
「うわ、いいなー」
「エリンギは?」
「烏野がさあ制服可愛いんだよねー」
「お前家から遠くね」
「そうそう。だから結局一番近いとこにした。早起きやだし」

家が同じ方向にあるので、特に別れる事もなく並んで歩く。

別々の高校に行くのだから、こんな風に喋るのも残り僅かかあと思うと妙に寂しい。
だから、ちょっと黒歴史みたいなものをほじくってやろうと思う。

「英さあ、幼稚園の頃のこと覚えてる?」
「なに? どれ?」
「毎日私にプロポーズしてたこと」
「ぶっ」

そう。英は毎日毎日、私に「けっこんしよ?」と迫ってきていたのである。
本人は覚えてなかったのかはわからないし、私としても実はあやふやな記憶だ。
ただ、それを微笑ましく見守っていたらしい母がしっかり覚えていたらしい。たまに英の話をすると必ずこの話をし始めるくらいには。

「いきなり変な話持ち出すなよ10年は前の話だろ」
「いやあ、英とももうじきお別れかも知れないから初恋の淡い思い出をね」
「黒歴史ほじくり返してるだけだろ」

吹き出したお茶が勿体無い、とボヤいた英ににしし、と笑ったら、ちょうど別れ道の曲がり角。
じゃあまた明日ね、と手を振ったら。

「……3年後にもう一回言ってやろうか?」

にや、と口角を上げて笑った英に、とんでも無い仕返しを食らってしまった。


 
[ 6/34 ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -