岩泉を攻略したい

 


スカートは規定の長さ、他の子よりは長く見えるけど、ぶっちゃけ制服ならこの長さが一番可愛い。
紺のハイソで足元引き締めて、鏡で髪型確認、メイクなんて日焼け止めと睫毛カールに、ちょこっと唇にリップを乗せるだけでいい。
このくらいなら先生に注意もされないし、十分誤魔化せるし、最近は可愛いは作れるメイクだけど別人になっちゃうほど塗装しちゃ意味がないし、まあまあ地顔でも悪くない造形に生んでくれたお母様には大感謝。

ローファーはしっかり履いて、バッグもきっちり持って。
挨拶は絶対かかさずに!
きっとそれだけで十分、可愛いは作れる!

「おはよー岩泉くん! 今日も一段と男前だね!」
「おうエリンギ、今日もひとりで賑やかだな」
「えへへ……」
「いやいや、褒められてないよエリンギちゃん」
「私と岩泉くんの会話に割り込まないでって何度言ったらわかるのよ及川徹!」
「俺が岩ちゃんと話してたところなんですけど!?」

私の麗しい恋路を邪魔する男子、及川徹。
何故かいつも私が話しかけようとした時や話しているときに岩泉くんの側に来る。
自分より可愛い女子に邪魔されるなら、なんていう少女お漫画展開かって言えるところなのに、男子に邪魔されるんじゃあ少女お漫画でもなんでもない。

「人気者だかなんだか知らないけど、私及川徹に興味ないから! あっちの女の子達にでも微笑みかけてなさいよ!」
「だから! 今俺が岩ちゃんと喋ってたんだってば! 岩ちゃんも携帯いじってないでなんか言ってよ!」

及川徹の悲鳴に、パチンとガラパゴス携帯を畳んでポケットに突っ込む。
それから溜め息をついて。

「二人ともうるせえ。及川はそろそろ黙れ。で、エリンギは俺になんの用だ?」
「ちょっ、岩ちゃんそうじゃない……!」
「あっ、あのね岩泉くん、今日の三限なんだけどね!」
「おー」

だいたいいつもこのあたりで、どこからか現れた松川くんと花巻くんが、及川徹の両側から肩を組んでにやにや笑いでどこかに連れて行ってくれる。ただ、絶対もっと前から近くにいるはずなのでもっと早く出てきて欲しいところではある。

「それでそれで、是非とも岩泉くんに食べて貰いたいわけです!」
「お前料理出来んの?」
「小学校の頃から家庭科はオール5だよ!」
「ふーん。まあ俺三限体育で腹減るし、くれるなら貰うわ」
「うんっ! 頑張って作るね!」

私は今日も今日とて、恋する乙女なのだ。


 
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テーマ「人外ファンタジー」
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