高尾に介抱される

 


「エリンギちゃんもう駄目! 飲み過ぎ! 誰こんなに飲ませたの! 禁止!」
「いや勝手に飲んだんだって。披露宴ですっげーワイン飲んでたもんそいつ」
「止めろよ!」
「座ってる間は普通だったんだよ!」

隣のテーブルから見たところ、まあ確かに、新郎新婦と写真を撮るときだって普通に笑っていた。おめでとう、と、笑っていた。

披露宴の後、また親しい仲間内で少し飲んで話そうという面子の中に彼女も居たわけだが、なんとまあものの見事にべろんべろんに酔っ払ってしまっている。これじゃあ一人で帰るのも怪しい。

「俺送って帰るわ。はーい、エリンギちゃん帰るよ、タクシー乗ろう」
「えー? 一人で帰れるわよぉ」
「一人で歩けてないでしょ!」

拾ったタクシーに荷物を押し込んで、エリンギと共に乗り込む。
リンゴジュースがいいんだっけ、と朧気な知識を元に100%のパックを握りらせる。

今日は結婚式だった。
高校時代の俺のバスケの相棒で、エリンギの所謂元彼が新郎で、同じ病院で看護士をやっている新婦との、結婚式。

高校生活の後半、知っている限りでは、この二人は擦れ違いが続いた末の自然消滅だった気がする。
どちらの愚痴も聞いていた俺としては、本当は。
馬鹿みたいに真面目で馬鹿みたいに人の良かった二人だったから、二人並んで、幸せになって欲しかった。

なんとかリンゴジュースを飲ませながらエリンギを部屋に送って行った。
アルコールで上気した赤い顔で、エリンギはへらりと笑っていた。綺麗だったねえ、なんて、笑った。
そして、それから。

「……しん、たろ」
「エリンギちゃん?」
「……っう、わたし、わたし、ちゃんと笑えてた、かな? しんたろ、しあわせそう、だったよね。わたし、ほんとは」

あそこにいたかった、とぼろぼろと泣き崩れた。
崩れてしまう化粧を気にすることもなく、俺にしがみついて本格的に泣き始めたエリンギに、たまらなくなって。

「……エリンギ。俺、今から最低な事言うから。ちゃんと聞いてて」

酔っ払い相手になにを言っているんだ俺は。

……ああ、そうか、俺も、酔ってるんだ。

「俺、お前の事好きだった」
「は……」
「ほんとは、今も、好きだ」
「たかお」
「代わりにしていいよ。なにも隠さない、全部さらけ出すし、触れて欲しくないことには触れないから」
「まって」
「なあ、エリンギ」

俺が慰めてあげる、なんて。
言った俺も、頷いた彼女も、きっとどうかしちゃってるんだ。


 
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テーマ「人外ファンタジー」
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