黄瀬は結構失礼な奴

 


笑顔が可愛い、かっこいい。先輩達と過ごしてるときは可愛いけど、ひとりの時はかっこいい。やっぱり目立つ。人当たりよく優しくて、素敵。

以上、だいたいの我が海常高校女子における黄瀬涼太の評価である。
まあかっこいいという言葉が可愛いの倍近く聞くけど。

しかしやつはそんなあれではないと私は思うわけだ。

「うわっ、先輩その顔は女子としてアウトっしょ……!」
「うるっせーわね、あくびくらい好きにさせろ」

こう、なんでこう、わざわざ指摘してくるかな。ていうかどっから現れた。

「笠松先輩に用事あるんスーっ! エリンギ先輩にじゃねえし」
「敬語を使いなさい、形だけでも年長者を敬え」

引きつる口元を黄瀬から隠して、窓際の席の笠松を呼ぶ。
此方を向いてすぐに、廊下側の窓から顔を出す後輩に気付いて寄ってきた。

「なんだ黄瀬」
「これ渡しに来たッス! 合宿の!」
「あー? お前以外からは全部回収してるわボケ。監督に直接持って行けっつったろーが」
「えーっ!? なんスかそれ聞いてねっス!」
「テメェが聞いてねえんだろ!」
「あいたっ!」

笠松と接する黄瀬は確かにかわいげはある。ぶんぶん振り回す尻尾が見えるような気もする。
だがしかし。否、だからこそだろう。

「私挟んで揉めんなよ……」
「あっ、ワリィ、エリンギ」
「エリンギ先輩まだ居たの?」
「ここは私の席だからな! モデルでエースだからって調子のんなよ! 女子みんながみんなお前にキャーキャー奇声上げるわけじゃねえぞ黄瀬ェ」
「奇声じゃねえし黄色い悲鳴ですし」
「似たようなもんだろ」
「笠松先輩まで!」

お前は今まで共学でどう生きてきたのかと吃驚するほど女子が苦手すぎる笠松と、まあ慣れというやつか私はそこそこ仲がよかった。
笠松先輩に懐く黄瀬にはそれは驚愕であり、どうやら私が気に入らないらしい。
あいつの口の悪さに引きずられるように私も最近口汚く応戦するようになった所為もあるかも知れない。仕方無い。

「エリンギ先輩マジ口悪過ぎッスわ。そんなんじゃいつまで経っても彼氏できないよ?」
「吃驚するほど余計なお世話だよ。早よ教室戻りなイケメンくん」
「うわっ、鳥肌立った! エリンギ先輩にイケメンとか言われて鳥肌立った!」
「早よ教室帰れ黄瀬涼太!」

ベシンと腕を叩くと、またぷりぷり文句を言いながらもケラケラ笑ってまたね先輩、と言って去っていった。

はあ、と深々溜め息をつくと笠松がお疲れ、と言ってくれた。全くだ。

「ほんと懐かれてるわね笠松……」
「は? 俺は部活あるからだし。懐かれてんのはお前だろ」
「は? どこが」
「あいつが女子相手にホイホイ悪態吐くわけねえし、一々名前覚えるわけねえし、覚えても呼ばねえだろ」
「は?」
「先輩って言えば名前呼ばなくても済むのに、わざわざ名前呼んでんじゃねえか」
「……かっわいくなっ」

次、悪態吐いてきたら指摘してみよう。


 
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