高尾に見惚れる

 


最悪な印象さえ植え付けられていなければ、俺はわりと誰とでも打ち解けられると思っている。
で、我ながら結構単純なので、好意を向けられたりすれば簡単にその気になれたりする。
別に誰でも彼でもってわけじゃねえぞ、念の為。

なんでいきなりこんな話を始めたかって言うと、だ。

「なあ真ちゃん聞いてる?」
「うるさいのだよ気が散る」
「ひっでーなあ」

例えばこうして緑間と話をしている時。
いつものように緑間にあしらわれた時に拗ねたふりをしてちらりと視線を逸らしてみたら。

「っ!」
「なめこ? どうしたの?」
「な、んでも、ない」

ほら。彼女だ。
クラスメートのエリンギなめこ。
最近、よく俺の方を見ている。

クラス内じゃ緑間と居る事も多いので、はじめはそちらが目当てかと思いきや。
彼が居ないときも、別の誰かと話をしている時も視線を感じた。
自惚れと言えばそれまでなのだが、一瞬目が合ったら赤くなって勢いよく(しかも顔ごと)逸らされたら自惚れもするだろう。

けど、クラスメートといえど実は彼女とあまり接点がない。
なのになんでかなあ、なんて思ったりもしたんだけど。

まあ、そんな事を思ったって、好意を向けられるのは悪い話ではない。むしろ、結構気分がいい。
で、まあ冒頭で言ったとおり、わりとその気になる。

だからっていうと、ちょっと動機としてはあまりよくないかもしれないけど。

「ね、エリンギさん」
「っな、に、かな。高尾くん」
「俺と付き合ってよ。返事はイエスかハイな?」
「へっ……!?」

今までで一番真っ赤になった顔を見て思い出した。

少し前に、彼女が長かった髪をバッサリと切った時。俺の席の近くで友達とそんな話をしていた彼女に。

「あれ、エリンギさん髪切っちゃったの? なんかもったいねえなー。でも短いのも似合うじゃん」

俺はそう言って笑った。
きっかけを作っていたのは、どうやら俺の方だったらしい。



短編強化台詞
「俺と付き合ってよ♪返事はイエスかハイな?」

 
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