相談してみた。



「あの」
「? なに?」
「黒尾さん、を、呼んでいただけないでしょうか」

なにやら意を決した様な表情、の、見たことのない女子に呼び止められた。
丁度便所から帰ったきたところで教室の目の前の廊下。ちらりと見た教室の中には、黒尾が他のクラスメート達と馬鹿騒ぎしている。

まさか告白か? なんて、思いつつ。

「黒尾? 黒尾鉄朗?」

黒尾なんて奴は実は1人しかいないのだが、あえて確認を取ってみると一瞬驚いた顔をしてから、「え、えと、バレー部の主将さんの黒尾さんです」と答えた。やはりあいつなのか。

ちょっと待ってな、と答えて、ちらりと足元を見る。上履きの色は、2年生だった。

「黒尾ーっ、なんか二年生がお前に用事だって! 可愛い女の子!」
「ヒョエッ」
「なにそれマジ?」
「はよ来ーい」
「はいよー」

なんだお前モテ期か、爆発しろ、とかなんとか言われながら教室の出入り口まで来て、この子、と教えてやったら向き直った。
正直横から見てると、小柄な女子はぐっと首を上に向けて向き合っているので、大人と子供のようにすら見える。

「俺に用事?」
「は、はい。バレー部の主将さんの黒尾さんです、よね?」
「うん。えーと、2年の誰さん?」
「あっ、申し遅れました2年3組のエリンギと申します」
「エリンギさんな。で、どうした?」

このままここで喋り始めそうな雰囲気からして、どうやら告白ともちょっと違うらしい。
黒尾のことも今ここで名前と顔が一致したようだったし。

なんとなく興味がわいて、黒尾の斜め後ろに立ったまま話を聞いていると、まさかマネジ希望じゃないだろ? と笑った黒尾にバッサリと違います、と答えて。
意を決したようにキリッと黒尾を見据え直すと。

「実は折り入って相談させてもらいたいことがあって来ました。と言うのも、孤爪くんが告白してくれたのに、お付き合いしてくれないんです」

と、宣った。

「「……は?」」

衝撃的すぎる内容に、思わず黒尾と声を揃えてしまった。

「……どー思うよ、夜久」
「……さあ。研磨に関してはお前にわかんねえ事は俺にもわからん」
「うーん……あの研磨がなあ」

とりあえず授業が始まりそうだったので、昼休みにまた来てくれ、と黒尾は答えて、エリンギさんもわかりましたありがとうございますと律儀にぺこりとお辞儀していった。
第一印象、悪い子じゃないと思う。

が、あの孤爪研磨が、女子に告白。

これ以上無いくらいドッキリかと思われるワードに、俺はおろか、彼と幼少期からの付き合いである黒尾もこの情報を処理し兼ねていた。

「まあ詳しい事は昼休みまで待つしかねえな」
「だな」

ボソボソと話を終えてちらりと教室の壁掛け時計を見上げると、4時間目が終わるまで、まだあと30分はあることを示していた。

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