その2

 


はあ、と頭を抱えて溜め息を吐くと、正面にいた黄瀬と黒子が、顔を見合わせてから同時に首を傾げた。

「どしたんスか青峰っち」
「似合いませんよ青峰くん」
「うるせーよ俺にも色々あるんだっつーの……」

また、はぁ、と青峰が溜め息。
その姿に黒子は思いあたる節があるようで、ああ、と一つ頷いて。

「エリンギさんですか?」
「うるせえよテツ」
「図星なんスね」
「黄瀬も黙れ」

エリンギなめこ。
近頃、青峰に熱烈なアピールを繰り返す桃井の友人らしい。

一見にしてガラの悪そうな彼に面と向かって好意を示してくる女子は少ないが、実は影で騒がれているのを、二人は知っている。
更に、普段はおっぱいおっぱいとうるさい女の敵のような彼が、実は純情極まりないことも、知っている。

「なんなんだよあいつマジで」
「なにって、青峰っちが好きで好きでしょうがない女の子じゃないッスか。黄瀬くんは青峰くんと沢山一緒に居て羨ましいなあ腹立たしいなあとまで言われたッスよ俺」
「なんだそれ知らね」
「僕も言われました。仲良しだよね羨ましいなあ変わってほしいなあって言われました」
「知らね」
「俺のとちょっと違う!」
「人徳じゃないですか?」
「シンラツ!」

黄瀬と黒子の言葉に、青峰はまた頭を抱えた。どうにも処理しがたいらしく、うー、だのあー、だの唸っている。
少し覗く耳は赤い。

「青峰くん、満更でもないでしょう」
「つか、結構気分いいっしょ?」

ねー、と二人は顔を見合わせて笑った。

趣味が人間観察な友人と、人間観察が特技な友人に声を揃えて言われてしまえば。青峰が出来る抵抗は、うるせえと声を絞り出して意地でも認めないことくらいだった。


 
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