その3
「「あの研磨が……!!」」
そこまで聞いて、くっ、と目頭を押さえて悶え始めた(?)黒尾と夜久についうっかりドン引きする。
まだやっと前提までを話し終えたばかりだったのだが。
「……えと、続きを聞いていただいてもよろしいです?」
「「どうぞ」」
息ぴったりだな、ともごもご焼きそばコロッケパンという中々にボリューミーなものを頬張りながら、それで、と続ける。
風がやんで、え、と間抜けな顔で呟いたエリンギの隣を、それじゃ、とそそくさと研磨は通り抜けようとする。
エリンギは勿論そんな研磨を慌てて引き止めた。
「まっ、待ってよ孤爪くん!」
「えっ……で、でも、始業に遅れる……」
「朝から爆弾落としといてそんな! って言うか私の話も聞いてよ!」
「???」
本気でこの場を抜けて教室に向かおうとする孤爪に、しどろもどろになりながらもこうなりゃヤケだ、と、
「わたし、実は私も、孤爪くんのこと好きなんだよ!」
そう、伝えたら。
ちょっとだけ顔を赤くして、それからもにょもにょと口を動かして、ありがと、とぼそりと呟いたかと思えば。
「……じゃ、教室行かないと」
「……!? あっ、あのさ孤爪くん」
「……? え、と、まだ、なんかある?」
漸く靴を履き替えながら、訝しげに首をかしげる研磨。
だいたいこの辺りですでにおかしいなとはちょっと思っていたのだけど。
「その、両思い……? だよ、ね?」
「……そう、なんじゃない?」
「じゃあ、その、お付き合い、とか……」
して貰えるでしょうか、と尻すぼみになって行くも、なんとか言葉にする、と。
「……えっ。なんで?」
心底意味がわからない、と言う顔で首を傾げられ。
さらにバッドだかグッドだかよくわからないがジャストなこのタイミングで、予鈴が鳴ってしまった。
(余談だが、この時点でエリンギの脳内では「なんで #とは」などと某SNSのような字幕が点滅する程度には混乱をきたしていた)
「と言うことなんですけど、どうしたらいいと思います?」
もりもりと焼きそばコロッケパンを咀嚼しながら言ったエリンギの言葉に、黒尾と夜久は今度こそ頭を抱えた。
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