× × × × × 今時直接的に締め上げる、なんてそんな昭和の遺物みたいな真似は流行らない。
じゃあ、どんなやり方が流行るかって?
「おー、おー、出て来る出て来る……」
そんなの、ロボット検索でエゴサーチをすれば簡単に見つかる。
学校名やクラス番号とフルネームでAND検索をかけると面白いくらい出てくるSNS上での悪口の数々。
なにが面白いかって、たまに高校も別れ疎遠になった中学の頃の同級生達まで出て来るのだからお笑いだ。
これ、私が名誉毀損で訴えれば勝てるわねなんてやりもしないことを思いながら。
勝手に私の個人情報バラまかないでよ、なんて内心ボヤきながら、随分嫌われたモンだとネット上で私を罵る性格ブス達の語彙の無さに面白くなってついつい歩きスマホをしていた時。
「あっ……!」
するっ、と滑り落ちたスマホは着地後、地面を滑って前を歩いていた人の足にぶつかって止まった。
「すみませ……っ!?」
「……杜若」
私のスマホを拾い上げたのは、ジャージ姿の二口堅治だった。
私の声に一瞬だけこっちを向いたものの、彼の目線はスマホの画面。
ヤバい、エゴサーチの結果画面……!
「ふ、二口く」
「……ん。気を付けろよ。歩きスマホはあぶねーぞ」
私のスマホを持つ方とは逆の手に自分のスマホを持っているのではまるで説得力が無いが。
そんな事より、初めて見た妙に優しい笑顔が癇に障った。
「……ありがとう。でも、同情はいらないわ」
半ば奪うように二口の手からスマホを受け取って、早足に追い越した。
ああ! ムカつくったら!
可愛い女の子になりきって女子に嫌われたって、そんな僻み妬みはこれっぽっちも堪えない。
悲劇のヒロインになりきるのは簡単だけれど、私は別に不特定多数の男達に媚びへつらいたい訳じゃない。
完璧な自分でいたいだけ、そしたら相手が勝手に寄ってくるだけ。
それをあんな……「かわいそう」に思われるなんて、冗談じゃない!
ヒールを鳴らして歩く私の後方で。
「ふーん……気が強いんだ」
やたらに愉快そうに笑う彼が居ることを、私は知らない。
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