× × × × × 今時自称天然な脳内ゆるゆるふわふわガールはただの馬鹿だし、なんにもできない甘えん坊は守ってあげたくなんか無くて生活力皆無として切り捨て要員。
なんでもやっちゃうような母性溢れる世話焼きさんは一歩間違えりゃヒモ付きになっちゃうただのカモ、それかただのお節介。
人間理想を追い求めて生きているなら、男の理想は少女漫画のヒロインよりも、そのライバルの方がいい。
だいたい少女漫画のヒーローってのは、特に対した取り柄もないヒロインと、取り柄だらけのライバルを並べてもヒロインを選んじゃう一種の物好きなんだから。
勿論それが女の子の理想で、一種の真理ではあるんだろうけど。
「杜若、最近すっごい二口にべったりじゃない?」
「狙ってんじゃねーの? 多分うちの学年で一番イケメンなの二口だし」
「学校でも学校じゃなくたって選び放題なんだからさ〜、貴重な学内のイケメンくらい譲って欲しいよね」
「男ってちょっと可愛かったらそっちが正義だもんね〜」
……少女漫画のヒロインは、こんな事は言われない。
ていうか、馬鹿じゃないのかこいつら。
まあ、確かに狙ってるし? 学内の男子は選び放題かも知れないけど?
だからって、その"杜若"も使うトイレで言うかそんな事。
個室を出ると、あからさまにマズい、という顔でやたらケバいフグみたいな女子が4人、一斉にこっちを向いた。
引きつった表情の4人をよそに手を洗って、鏡で前髪をちょいちょいと整えて。
それからようやく一人ひとりの顔をそれぞれじっと見つめてから。
ふ、と口角を緩めた。
「ごめんね? あなた達よりちょーっとだけ可愛くて」
反論を聞く義理もないので、それだけ言ってトイレを出た。
「あ、杜若」
「どうしたの、二口くん?」
「さっきの数学の最後んとこ、俺問題やってて話聞いてなかったんだよね。センセーなんつってたかわかる?」
「ああ、うん。この補足の説明でね……」
その説明が終わった頃。
さっきのトイレのフグ4人組が戻ってきて。
「あー、成る程ね! テストに出すかもとか言ってたからさ〜。お前に聞いて正解だったわ」
「それほどでも〜。今度私がわかんないとこあったら教えてね」
「おー、実習の時ならな」
屈託無く笑った二口の笑顔にか台詞にか、居心地悪そうに身を竦めていた。
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