× × × × ×
 


確か、先輩が、某SNSアプリで連絡を取っていた友人が、「彼女が出来た」と自慢して来た、なんて忌々しげにボヤいていたのが発端。

工業高校の女子は三年にもなればひたすら逞しいしな……なんて呟いてから。

「そういやさ、二年に可愛い女子居たよな。名前知らねえけど」

思い出したような笹谷の言葉にひとりのクラスメートが脳裏を掠めた。

「あー……杜若ッスかね。杜若雅。俺同じクラスッスよ」
「へえ。可愛い?」
「"比較的"とかじゃなくてフツーに可愛いッスよ〜。多分今居る全校女子ん中じゃ一番じゃないスかね」
「マジで……お前羨ましいな」

イケメンなら邪険に扱われることもねえだろうしなあ、なんて。

杜若雅。笹谷達に言ったとおり、容姿は悪くない。どころか、ハッキリ断言出来る可愛い女子。

ただひたすらケバいだけのゴリラの集団みたいながさつな勘違い女子じゃないし、自分の容姿ばかりを気にかけて他をおそろかにしているようにも見えない。
教師陣からの評価もいいし、大半の男子なんか二言目には「あんな彼女いたらいいよな」、だ。

しかし、これは独断と偏見……つまりは俺の勘によるものだけど。

(絶対、本性じゃねえだろ……)
「おーす」
「あ、おはよう二口くん」
「おー、杜若。おはよ」

にっこり笑った彼女は、うん、確かに可愛い。
ニッと笑い返した俺の顔も多分、崩れた造形ではないし。

漫画とかみたく、微笑んだだけでキラキラオーラが出たり黄色い悲鳴を受けるようなタイプじゃないけど。それでも俺だって、自慢でもないけど、顔の造形については生まれてこの方、褒められはすれど文句を言われたことはない。

それにしても。

「やっべ、英語の課題やってねえ」
「え、二口くん今日当たるよ」
「うーわ、だよな。杜若、やってる?」
「うん、一応」
「ちょい見してくんね? 今度なんか礼はすっからさ〜」
「えー、お礼なんていらないよ。はい。先生が来る前にパパッとやっちゃいなよ」
「さんきゅ!」

近頃の彼女は、俺に対して大層気前がいい。

俺がその気でないのを知ってか知らずか。自惚れでなければ、学年殆どの男子の気を惹くだけじゃ飽きたらず、俺をも侍らせたいのか。

しかし生憎だが、天の邪鬼な俺は嵌められるくらいなら、嵌めてやりたい方なのだ。


 
...思惑通りになんてさせない。 

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