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制服はきっちり、校則違反なんてバカな真似はしない。
大体制服って言うのは規定の膝丈が一番可愛いように出来てるし、無闇やたらに脚を露出させるなんて頭悪いじゃない?
それだけで頭のスッカラカンな女に思われるなんて冗談じゃない。

学校にしていくメイクは下地兼用になる日焼け止めと、ファンデーション、うっすらとチークとシャドウを乗せて、睫毛はカールして上げるだけ。
他の子達はせっせせっせと毛虫みたいなつけまつげを一生懸命乗せているけどお生憎様、私はそんなことしなくたって睫毛は長いし、あからさまにメイクしてますってバレバレの顔じゃ先生に注意されちゃうじゃない。ばっかみたい。
唇は乾かないように無色のをキチンと塗って、その上にほんのりピンク色のをほんの少し乗せたらいい。真ん中だけ気持ち多めに。

それから声を掛けられたら必ず笑顔で応えること、挨拶は絶対忘れずに。
がさつな言葉遣いや仕草は絶対NG。見た目だけ取り繕ったって意味ないわ。

「おす、杜若」
「おはよう山田くん」
「よう、早いな杜若」
「そういう増田くんだって、今日は早いじゃない? いっつも予鈴ギリギリだもん」

まあ、工業高校って言う女子の少ない環境の所為もあるだろうけど。たったそれだけでこんなに世の中イージーモード。
当然よね、だって元から可愛い私が更にそう見えるように努力しているのだもの。

だけれど、つまり私は可愛いんだから、その他大勢みたいな男子に囲まれたって意味がない。
やっぱり隣にはちゃんと中身の伴ったイケメンが欲しいじゃない?

工業高校じゃ難しいかなって思ってたけど、神様は私の味方だった。

「おーす」
「あ、おはよう二口くん」
「おー、杜若。おはよ」
「青根くんも、おはよう。二人とも朝練あったんだよね? お疲れさま」

二口堅治。

同じクラスのイケメンで、所属するバレー部では一年の頃からレギュラー、スタメン入りを果たしている。
コミュニケーション力が高くて、お調子者なところもあるけれど真面目なところだってちゃんとある、クラスの人気者。

相手として不足がないどころか、これ以上ない好物件。

「やっべ、英語の課題やってねえ」
「え、二口くん今日当たるよ」
「うーわ、だよな。杜若、やってる?」
「うん、一応」
「ちょい見してくんね? 今度なんか礼はすっからさ〜」
「えー、お礼なんていらないよ。はい。先生が来る前にパパッとやっちゃいなよ」
「さんきゅ!」

そしてやっぱり神様は私の味方なので、二年になって初めての席替えで。
私は二口堅治の隣の席になっていた。


 
...いざ、尋常に勝負! 

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