× × × × × 「っっしゃ! 3連続ドシャット!!」
湿気のこもる体育館、満面の笑みで汗を流して、チームメイトとハイタッチ。
試合開始のホイッスルが鳴ってからこっち、全く点を落とさないなんてことはないけど、ほぼ相手の攻撃は抑え込まれたまま。
そういやうちの男子バレー部、強豪だったっけ、なんて今更思い出してみる。
攻撃は最大の防御、なんてゲームや漫画ならよく言う言葉だけど。"鉄壁"と称されるこのチームは、防御が最大の攻撃である。
そして、それだけ大きな壁を作る高さ・パワーのある彼らは、当然。
ズバンッ、とボールが床に叩きつけられる音と微かに揺れる感覚さえさせて。
見ているだけで震えるような強烈なスパイクが決まった。
3年の先輩を揶揄う姿も、コートの中の真剣な顔つきも、そしてブロックやスパイクを決めた時のちょっと子供っぽい笑顔も、教室や授業では見慣れないそれがなんだかおかしくて。
ギャラリーの手すりに上体を傾けて、頬杖をついて、笑ってしまう。
「私を呼んでることなんて、すっかり忘れちゃってるんじゃない……?」
思わず口から溢れた声が、想像以上に不満げで。
本当に今日は、調子を崩される日だな、と思いながら、ふと、ポケットの中の携帯を取り出して。
特に意味もないのだけど、ぴろりん、なんて、鳴らしてみたりして。
一方、階下のベンチでは。
「なあ二口、もしかしてあれ、噂の可愛い女子?」
「そーっスよ。可愛いでしょ、顔」
「おお、顔はな。ジッサイどーよ?」
1ゲーム目の後、流した汗を拭ってドリンクを飲みながら、ちらりとギャラリーを見やる。
宣言通りわざわざレモンを作って見に来た割には興味が無いのか、それともたまたま今がゲームの合間だからか。
どちらが真実かわからないが、杜若はつまらなそうに携帯を弄っていた。
話をふってきた笹谷が同じようにそれを見てどう思ったかは知れないが。
「い〜い性格だと思いますけどねェ」
なんて。
言ってみた声が、どうにも不満げに聞こえて、タオルの下で舌打ちをした。
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