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それは突拍子の無い誘いだった。

「練習試合?」
「そう。興味無い?」
「二口くん、スタメンだったっけ」
「おう! まーやんのもうちの体育館だしさあ、見に来てよ」

駄目? と首をかしげる二口はわざとらしくあざとい。

挑発されているな、と感じた。
けれど、乗ってやるのもわるくない。

「二口くんさえ良ければ、喜んで。せっかくだし、なにか差し入れしよっか?」

にこりと笑って、お返しとばかりにわざとらしく首を傾げてやった。

そしたら一瞬、きょとんとして。
それじゃあ、オーソドックスにれもんのはちみつ漬けとか頼める? なんて笑ってきたので、お安い御用と頷いた。

そして当日の朝、レモンの入ったタッパを入れたトートバッグを持って言われた時間に校門に行く、と。

「おはよ〜杜若。わざわざ朝からドーモ」
「えっ、どうしたの二口くん。こんなとこ居ていいの?」

何故か、ジャージ姿でへらりと笑っている二口が居た。

「あんまよくない! けどま、案内くらいはしなきゃかな〜って思って。ギャラリーに上がることってあんま無いし、よくわかんないっしょ?」
「ん……まあ、そうかも。そういえばあんまり考えてなかったけど」
「先輩にはちゃんと言ってきてるし、まあまだ相手校も来てねえし、こっちこっち」

言うが早いか手を引かれて、外階段から二階に上がる。
場所指定までされて、ここで見てろよ、と言われてパイプ椅子まで出された。
それから、先輩らしき人達に呼ばれて内階段を駆け下りて行ったかと思えば、こっちを振り向いてニッと笑った。

それに面食らってるうちに、練習試合の相手校が来る。
一瞬で空気の変わった体育館内に小さく溜息をついて、用意されたパイプ椅子に荷物を載せて、ギャラリーの柵に肘をついた。


...どうやら今日は、彼のターンらしい。 

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