× × × × ×
 


愛想は悪いより、良い方が得をするに決まってる。
誰に対してもへらへらするやつは信用ならないなんて言うけれど、誰に対してもムスッとした顔なら接しづらいと文句を言う。

全く人間てのはわがままね。

ただちょっと顔の筋肉を和らげてやればみんながいい顔をしてくれるのなら、誰だってそうするでしょ?

何かの漫画でもお医者さんが言ってたわ。
「やらない善よりやる偽善」ってね。
やって良い方に繋がるなら、無理矢理出来もしない本当に拘るより、嘘でもやるのが良いのよ。そう言う事でしょ?
(少しニュアンスが違うかしら?)

まあとにかく、そう言うことだから。

「私に文句を言われても困るのだけど」

はあ、と、それだけを溜め息混じりに呟いた。

私の前には、見た目ばかりはなんともおとなしそうな女子と、それを囲むちょっと派手な見た目の女子が二人、併せて三人。
全員一年……つまり一つ後輩だ。
移動教室のついでに自販機に行こうと早めに教室を出て、遠回りしたのが完全に失敗だった。

私の態度が気に食わなかったらしい彼女達は、悲痛に表情を歪めたり、敵意を露わに表情を歪めたりして。

「あんたが付きまとうから悪いんじゃん!」
「なにか誤解があるみたいだけど、ただクラスが同じで席が隣だから話すだけよ?」

とかく昔から、私はどういう態度であれ同性に好かれない。
少しくらい馬鹿な方が可愛いのかもしれない。が、それは私のプライドが許さない。

同年代の同性には好かれないが、それはそれとして楽しいものなんて最近は思うようになった。我ながら性格が歪んだものだ。

ともあれこの子達をいったいどうしようかな、と思った時。

「あっいた、おーい杜若ー!」
「ッ!?」

上から、原因とも言って良い男の声が降ってきた。

「……なあに、二口くん」
「次の移動無くなって、なんか今度の話し合いすんだって。だから早く戻って来いだってさ」
「そうなんだ……わざわざありがと」

にっと笑えば、彼も笑って窓から出していた首を引っ込めて。
そう言うことだから、私、教室に戻らせて貰うわねと一方的に一年生に別れを告げて教室に戻ると。

「おかえり。さっきのどしたん?」

女子にもモテんの? なんて無邪気な顔でケラケラ笑う二口のわざとらしいセリフに、思わず溜め息混じりに。

「それは二口くんの方じゃないの」

そうボヤいた。


 
...わかっている癖に。 

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