万事屋に突撃

 


「一番、舞茸榎、いっきまーす!」

ドゴォッ、と盛大なおとと砂埃を舞い上げて、少女はにんまりと笑った。
ガッシャン、と倒れた引き戸に乗り上げて、外から丸見えの全開になってしまった玄関には構わずずんずんと奥に進んだ。
そこには、ソファーから転げ落ちた家主が、仰天の表情で呆然と少女を見ていた。

「お家賃回収に来ましたよ坂田さん!」
「こっ、コラァァァァァアアアア!!!! 玄関は破壊しちゃ駄目だって何度言えばわかるの榎ちゃん!!!」
「お家賃はきちんと毎月収めなきゃいけませんって何度言えばわかるんですか坂田さん」

全くもう、と腰に手を当ててぷうと小さく膨れて見せる彼女は、それ単体で見れば可愛いかも知れない。
が、つい今し方玄関の引き戸をぶっ倒した張本人である。

「へん! 何度来られても無いもんは無いね! こっちは自分が食うのにも困ってんだからな!」
「威張って言う事じゃあ無いじゃないですか……まあ、とりあえず綾乃さんにはそう言っておきますけどね」
「おう、頼んだぞ」
「あんまり滞納すると追い出されちゃいますよ」

はああ、と溜め息をついてガタガタと戸を元に戻しながら出て行った。
たん、たん、たんと階段を降りる音がし始めた頃、すらりと押入の襖が開いた。

「行ったアルか……」
「日に日に手段を選ばなくなってきましたね彼女……」
「いい度胸だなこのクソガキ共! 雇い主と雇い先のピンチに黙って隠れるたあどういう了見だコノヤロー!! こんな時ばっかり息合わせやがって!」
「僕ここに住んでませんし、給料貰ってないのにここの家事させられてるんですから僕も被害者なんですよ銀さん」
「そーだそーだ!」
「おめーはうちに居候してんだろが!!」

ふざけんじゃねえぞクソガキ! やんのか天パー! ちょっと暴れないで下さいよ!

そんな声と、パラパラと天井の埃が落ちてくるのを眺めながら。

「やっぱり神楽ちゃんも新八くんも居ましたね」
「そうだねェ……たま、そこの掃除頼むよ」
「はい、お登勢様」
「全ク、喧シイ奴等ダネ」
「榎、また夕方のうちの開店前に行っとくれ」
「はあい了解でーす」

今日も上の住人は賑やかだ。


 
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テーマ「人外ファンタジー」
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