拾う話
大陸、バルバッド近郊。
辺りは程々に緑が茂る道だ。
しかし一歩道を外れれば、青々とした木々に囲まれる。
海を渡った先にあるまだ若い島国、シンドリア。
大海洋国家バルバッドの国王は、そのシンドリア建国の主であり現王であるシンドバッドに貿易のいろはを教え、そして主要貿易国となった。
その恩人の国に、シンドバッドは訪れていた。
国内を散策し、少し、ついでとばかりに国の外に足を伸ばした時だった。
「…………ん?」
「どうしました?」
道から外れた緑の茂る中。
何らかの気配を感じた彼は連れを道に残し、その中へ踏み入っていくと。
「なんだ、誰か……っ! おい、どうした、大丈夫か!?」
「…………うぅ」
「なにがあったんだ、しっかりしろ!」
「……お」
「"お"?」
「おなか……すいた……」
「…………」
行き倒れていた、赤毛の少女が居た。
最悪のケースを想像していたシンドバッドは一気に肩の力が抜けてしまったが、何も悪いことではないのだと思い直し、彼女を担いで道に戻った。
「なっ、なんですかその少女は」
「行き倒れていたらしい。起こしたが、"おなかすいた"と言ってまた気絶してしまった」
「……拾わないで下さいそんなもの」
「ほったらかしにするわけにもいかんだろう」
「面倒を見るつもりですか?」
「そうだなあ……とりあえず飯を食わせて事情を聞いてから決めるよ」
「正気ですか!?」
「こんな小さな少女がなにをする事もないだろ」
供の反論をハッハッハと朗らかにはねのけて、ぐったりした少女を肩に担いだまま、シンドバッドは来た道を戻っていった。
[ 2/3 ]