天然ステルス?

 


私はこう見えても読書家である。
夏休みは図書室の本を5冊まで借りれるらしい。
ハードカバーは持ち出さずに読むに限るので、文庫本をきっちり5冊選別して、カウンターの方に歩いていく。

すると、果てしなく目立つ長身と、奇妙な小物。
男バス部員、入部初っ端から異例の一軍入りを果たした同級生の一人だ。

見るからに育ちの良さそうなピンとした姿勢と、見るからにインテリな顔と雰囲気を醸し出している彼も、やはり見たまんま、本を借りに来たらしい。
けれど、行儀がいいとはお世話にも言えないくらいに盛大に舌打ちして、持っていた本を元の場所に戻して図書室を出て行った。

あららまさか今司書の先生いないのかしらとカウンターまで行ったら。

「あ、烏丸さん。貸し出しですか?」
「……黒子いるじゃん」
「? はい。僕図書委員で、今週当番なので」
「ふーん……まあ貸し出しお願いね。夏休みの5冊」
「はい」

入部したばかりの頃の実体験。
先日の幽霊話。
そして、今し方見掛けた素通り事件。

なれれば見つけられる。認識出来る。
知り合いだと、意識するから。
けれどそうでなかったら、ただの視界の一部としての認識になってしまう。

「……あんたも大変だね黒子」
「はい?」
「いやいや……」
「? 手続き、終わりましたよ」
「うん、ありがとう。また部活でね」
「はあ……」

不思議そうに首を傾げた黒子に、今日は目一杯付き合ってあげよう、なんて考えた。


 
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テーマ「人外ファンタジー」
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