カメレオンかなにかか

 


ばっくんばっくんと左胸の奥で暴れる心臓を抑えつけながら振り向くと、ベチンとなにか妙な感触とイタッという悲鳴。

振り向いた先にいた、妙に儚げな男子が両手で目を押さえていた。

「……えっ?」
「ポニーテールって凶器なんですね……痛いです」
「えっ、あっ、目に当たったの!? ご、ごめんね??」
「いえ……僕も近すぎたみたいで……」

ほんとにな、という本音はぐっと飲み込んで。
もう一度まじまじと黒子テツヤ(だと思われる)を観察する。

きちんとそこに存在する男子なわけだが、体格は烏丸と大差ない。むしろ自分よりか弱く見えるなとしみじみ思う。
しっかり視界の真ん中に捕まえておかねば、まるで向こう側が透けてしまいそうだなんて馬鹿なことを考えた。

「ええと……黒子、くん?」
「はい、そうです。マネージャーさんは……烏丸さん、ですよね」
「う、うん、そうだけど……ね、黒子くんさ」

今日、初めて来た? と。素直に疑問をぶつけた。
体調を崩してしまって、という言い訳もすんなり受け入れられそうな気がした。そう、気がしたのだが。

黒子はきょとんとして首を傾げ、僕、皆勤ですけど、なんて驚きの事実を口に出した。

「……え? いつもどの辺で練習してた?」
「大体このあたりです。僕、体力無いのでうっかり倒れて邪魔になるといけませんから」
「……このへん?」
「? はい。烏丸さんもよくここで沢山メモを取ってますよね」

誰よりも熱心なんだなあと思ったので、覚えてました。

「……よく見てんね、黒子くん」
「君、目立ちますから」

君はびっくりするほど目立たないな。

とは、流石に言わなかった。


 
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