C.AMの証言

 


変な子、ってのが最初の印象。
でもなんか、なんとなく。
第六感というのか、まあとどのつまり、やっぱりなんとなく。

苦手だ、と。思った。

「紫原、赤司が呼んでた」
「ハイハイ」

彼女が俺に話しかけてくる用件は大体決まっている。雑談を振ってくるようなことはまあまあ無い。

赤ちんの伝言とか、だいたいそれ。そうじゃなかったらタオルくれたりドリンクくれたり、調理実習であまったお菓子くれたり。

嫌なことをされたわけでもないから、別に嫌いでもなかったけど。

俺がそうやって伝言で呼ばれて少し歩いた後、振り返ったら必ず俺が落としていったお菓子の屑を片付けていたりだとか。

黒ちんがゲロ吐いてんのを横で世話してやってたりとか。

弱い奴の名前までわざわざ覚えて声掛けて笑ってたりだとか。

「そう言うとこ見るとさあ、イラッとすんだよね。まあ、だから烏丸って苦手」
「……嫌な所が見つからないから、ムカつくんだろ?」
「は?」

お前が他人に求めるライン、無駄に構ったりはしないし、だけどお前がお菓子が好きなのを知っているから優先的に譲ってくれる。お菓子の屑も、ぶっちゃけ今更だし、俺が言っても中々治らないのに烏丸が言ったところで聞くわけ無いからな。それでお互い嫌になるくらいなら黙って始末する。普通嫌がるような黒子の世話もかってでるし、一軍全員の名前や癖も把握している。ほら、中々の美談じゃないか?

くつくつと、喉の奥の方で赤ちんは笑った。

「余りにも人として出来過ぎているように見えるからムカつくんだよ。偽善者っぽくてね」
「……あー、まあ、そうかも」
「いい子ぶってるのが素だってわかってるから、よけい腹立たしいのさ」

今度もし灰崎と一緒に居ることがあったら見てみるといいよ。あいつ、面白いから。

「はあ……崎ちんねぇ」
「いい子ぶってるって印象が、少しは無くなるかも知れないぞ」

この後、気のない返事をした俺が、体育館に戻るまでの間にたまたま二人が話しているところに遭遇してしまい。

いつも赤ちんを睨むのとはまた全然別の、まるで視線で射殺さんとするような目つきで、崎ちんの(自主規制)に躊躇い無く蹴りを入れたりとか、完全なキレ顔で悶絶する崎ちんから距離をおきながら主将呼んだりとかしているのを見て。

確かにただのいい子ではないけど、やっぱり変な奴だと改めて思った。


 
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