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「ゔゔゔえ゙……っ」
「……おーう、久々だなあこれ。おしおし大丈夫かあ?」

秋の終わり、冬の始め。
黒子が一軍に上がってきた。

最初の頃は三軍の練習でさえバテていた奴だ。まあ、当然こうなるだろうなあと思いながら、黒子の背中をさすった。

「ずびばぜん゙……」
「いいっていいって。大丈夫?」
「もう吐くものがないです……」
「そうかい。はい口濯いで。ドリンク置いとくからね」
「烏丸、ちょっと来い」
「ん、今行く」

後でね、と軽く背中を叩いて赤司の所に走った。
珍しく、赤司は話をする私ではなく、私の後ろ見ていた。

はて。赤司は基本的に話をする時は相手を見て話をするやつだが。
そう思った瞬間、ついとこちらに視線を戻した赤司に一瞬、どきりとした。

なんだ、今の。気のせい?
妙に、値踏みするような目だったような。

「おい烏丸、聞いているか」
「うえっ、あっ、ごめんなに?」
「はぁ……お前までボーっとするな。二度も同じ話をさせるんじゃない」
「ごめんて、なに?」
「黒子をよく見ておけ。体育館の真ん中で倒れられても困るし、お前が一番適任だ」
「なんだそんなことか。いいよ、頼まれなくてもやるつもりだったし」
「そう……彼は、三軍でもああだったの?」
「まあ、4月とか5月頃はね」

どういう意味が込められていたかはわからないが、小さく溜め息をついて。
まあ、頼んだよと言って本人も練習に戻っていった。

その日の部活後、案の定居残りは辞退した黒子に、ついて帰ることにして。

「黒子」
「なんでしょう」
「あんたが一軍の練習で吐かなくなったらさあ」
「? はい」
「寄り道して帰ろう。コンビニでもいいし、マジバでもいいな! ね?」
「……いいですね、それ。楽しそうで」
「でしょう? だから、頑張ってよね!」
「そうですね。頑張ります」

頑張って貰わなければ困る。
だって、君はやっと活路を見いだせたのだから。


 
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テーマ「人外ファンタジー」
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