上には上が居る

 


「烏丸、お前赤司になにかしたのか?」
「虹村さん、その非常に気の毒そうな顔やめてください。誤解です」
「桃井の方が付き合いなげーのにお前ばっかり呼びつけてるしよお……あっそうかあいつも中学生男子だし(察し)」
「ちげえっつってんでしょうが!! なんなんですか用事は!」
「生意気だなテメー」
「あだっ!」

相変わらず遠慮も手加減もないデコピンを食らって悶絶する。

赤司以上に理不尽だ。
日本の年功序列制度なんかくそくらえだちくしょう。

じんじん痛む額をさすりながら、それで、結局なんなんですかともう一度訊ねると。

「ビブスの用意頼む。あとドリンクもな」
「……はぁい」

くっそ、とぶつぶつ文句を言いつつビブスを出して、外でドリンクを作っていると。

「カチューシャにポニーテール。お前が烏丸か?」
「あー……灰崎祥吾だっけ?」

正真正銘の不良で正真正銘の一軍レギュラーだ。

正直に言えば、私は彼が得意ではない。
残念ながら私は性善説論者ではないので、この世にはどうしようもないクソヤローも居ると思っている。で、こいつもそれに当てはまると思っている。

「私になんか用事? 今忙しいのよドリンク作るのに」
「色んな奴が言ってたんだよ。お前、あの赤司のお気に入りなんだって?」

無理やり振り向かされグイッと胸ぐら掴まれて、至近距離で灰崎がニイッと笑った。

「タイプでもねえが悪くもねえな。噂がマジなら、あいつも取り乱したりすんだろーな?」
「……ハッ、タイプでもないし最低だねあんた」

言って、思いっきり膝を突き上げた。

「てめっ……!」
「子孫残したいなら私に関わんないのが身の為よ、灰崎祥吾くん」

数ヶ月前まではランドセル背負ってた筈なのに、一体どんな育ち方したらこうなるものか。
全く世間は摩訶不思議、事実は小説より奇なり。

灰崎の所為で中断していた最後のドリンク作りを再開する。

が。

「っざけんじゃねえぞクソアマ!」
「ア゙ァ!?」

子孫断絶キックから復活した灰崎が立ち上がった、瞬間。

「よォ、なにしてやがる灰崎」
「あっ」
「……お前は後で説教だ烏丸」
「うっそぉ」

灰崎の声を聞きつけたらしい(どんな耳してんだよ)虹村が、背後から彼を殴り倒した為、私がぶっかけようとしたドリンクを見事虹村が被ってしまった。

その後、灰崎は虹村にボコボコにされ体育館の中に戻っていったが。

「冷たいシャワー浴びせてくれてありがと、よっ」
「いってええ! 私悪く無いじゃないですか! 全面的に灰崎が悪いじゃないですか! か弱い乙女の自衛手段です!」
「あんなドスの利いた声出す中一はか弱い乙女とは言わねえ」
「虹村さんがもっと早く灰崎に気付いてくれればよかったんです!」
「助けて貰っといてそれかコラ」
「ぎゃああああああギブギブギブギブ!! すいませんでした虹村さああああああ」

結果、また(さっきと同じところに!)デコピンを食らった上、何故かドリンク塗れのままヘッドロックをかけられて、私のジャージもドリンクで濡れた。最悪である。

「か弱い乙女なら可愛げのある悲鳴の一つも上げて見ろよお前……ぎゃああああああってお前……」
「キャアーッ、なんて言うやつ現実には居ませんよ女子に夢見過ぎです! っつーか虹村さん早く着替えてきて下さいベッタベタです!」
「お前がベッタベタにしたんだよ!」

スパァンと最終的には平手打ちを食らったし、若干ベタベタしたままもう一本ドリンクを作らなきゃいけなくなったし。

「烏丸お前、虹村さんと随分打ち解けてるんだな」
「……赤司には、そう見えんのか」
「女子マネにあそこまで手を出しているのを見たのは初めてだからな」
「半分はあんたの所為だから」
「は?」

とりあえず、私は灰崎が嫌いだ。


 
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