なんだこの急展開

 


「えっと……先週まで三軍にいました、烏丸円です。よろしくお願いします」

なんとも居心地の悪そうな顔の虹村をちらりと見上げると、その目の中に同じ様な顔をした自分がいた。

どうしてこうなった。

私と主将の心は今一つな筈だ。

端的に言おう。赤司に半ば脅された。
脅すにはなにか弱みが無ければならない。
私は迂闊にも、その弱みの塊を、自分の手で赤司に渡してしまったのだ。

あの綺麗な微笑みと、質問の意味を理解しないまま私は名前を答えた。
そうしたら赤司は、やっぱり満面の笑みのまま淀みなく。

「俺は他人の趣味について言及したり公言したりなんて趣味は無い。ましてや君の趣味に興味も無い。けど、君自身に興味がある」
「え…………あ゙っ!?」
「さて、烏丸さん。君は確か来週から二軍に行く人だったかな。虹村さんが言っていた」
「ウィッス……」
「じゃあ、交換条件って言うのはどうかな」

俺は君の趣味を黙っておく。勿論誰にも言わないし、どこかに書いたりもしない。君は今まで通り観察を続けて趣味の世界を広げたらいい。……一軍で、マネージャーをしながら。
一軍は中々面白い面子が揃っていてネタには困らないだろう。誰でも好きなだけ妄想の種にするといいよ。勿論俺でもいい。所詮妄想だからね。お前の能力を二軍に置いておくのは勿体ない。

それが赤司様のお言葉の全てだった。

なんかよくわからないまま赤司に気に入られたらしい私は、結局二軍かっとばして一軍専属のマネージャーになってしまった。
こうなったら得た物は一つだけ。

「烏丸さん! 同じ一年生が来てくれて心強いよ〜っ、一緒にがんばろっ」
「うん……よろしく、桃井ちゃん」

早々と、既に一軍専属になっていた桃井と仕事が出来る。そう、目下私にとっての得などその程度で。

「赤司ィ……お前、なんだってわざわざあいつを?」
「思いがけず知りましたが……彼女の観察眼は中々だと思います。他人が気付き辛いところによく気付くし、よく動く」
「まあ、らしいな。けど、そもそも一軍が選手が少ないからマネージャーもそんなには」
「いずれ、桃井だけじゃ、回らなくなりますよ。きっと」
「……ふうん?」

その時に、彼女が居た方がいい。

赤司と虹村のそんな会話を、青峰にウザ絡みされていた私が知る由もないのである。


 
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テーマ「人外ファンタジー」
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